市場投入は数年先か
メルセデス、EVの航続距離を80%延ばすとうたう全個体電池を発表
メルセデス・ベンツと全固体電池開発ベンチャーの米Factorial Energyが、電気自動車(EV)の航続距離を80%も延ばすとうたう、新しい全個体電池を共同開発したと発表した。
メルセデスは、Factorialが2022年に実施した2億ドルの資金調達に、ステランティス、ヒョンデとともに応じ、それぞれ全個体電池の共同開発契約を結んでいる。
メルセデスと共同で開発されたというFactorialの電気自動車用全個体電池「Solstice」は独自のFEST(Factorial Electrolyte System Technology)プラットフォームで構築され、この夏にメルセデスに対し量産に向けたサンプルが納品されたことが伝えられていた。このまま行けば、メルセデスの次世代EVの電力源になるだろう。
この新しいバッテリーは、現在のEVバッテリー技術に比べ、満充電あたりの走行距離を80%向上させるという。さらに重量を40%、サイズを33%削減することを目指している。
液体電解質を使うリチウムイオン電池の場合、動作温度が80℃を超えると電解液と電極が反応し始める。さらに温度が上昇すると、内部で短絡(いわゆるショート)が発生するなど、次々と内部構造が破壊され、最終的に発火に至る危険性がある。このため、現在はバッテリー冷却のしくみを備える電気自動車が多い。
一方、Factorialの全個体電池は90℃以上に温度が上昇しても問題なく動作するため、EVへのバッテリー冷却システムの搭載も不要になり、EVの価格を下げる可能性がある。
このバッテリーのエネルギー密度は450Wh/kgとされ、他の全個体電池の選択肢に多い300Wh/kgを上回っている。メルセデスは、Factorialと共同開発したこの電池により、充電1回で966km以上走れるEVを提供可能になるとした。
全個体電池は、いま自動車業界では流行語のようになっており、あまりBEVに積極的でないトヨタも開発・生産計画を発表している。メルセデスとFactorialは、この2020年代の終わりまでに、今回発表したバッテリーを搭載する最初のモデルが市場に投入されることを期待している。
- Source: Business Wire
- via: Electrek