偽造品とバレないために凝った加工

「Ryzen 7 7800X3D」、人気のゲーミング向けチップでダイのない偽造品が出回る

Image:Der8auer/YouTube

AMDの「Ryzen 7 7800X3D」は、現在売れに売れているゲーミング向けプロセッサーである。このチップの偽造品がオンラインショップに出回り、被害に遭ったとの報告が届けられている。

同プロセッサーは純粋なCPUコア性能はさほどでもないが、ゲーミング性能では高価な「Ryzen 9 7950X3D」にも匹敵するといわれ、ゲーマーからは引く手あまたとなっている。が、この過熱した人気がオンライン詐欺師の参入を招いているようだ。

ドイツの著名オーバークロッカーDer8auer氏は、ルーマニアに在住するファンの1人がオンラインマーケットプレイスOLXにてRyzen 7 7800X3Dを購入したところ、チップが動作しなかったと知らされたと語る。そこで自らも同じ業者から取り寄せて検証したところ、次のような発見があったという。

  • オリジナルの7800X3Dチップと同じ箱に入っており、箱のシリアル番号はIHS(チップを覆う金属製カバー)に記された番号と一致している
  • CPUのラベルは色あせ、取り付け位置も本物と違う
  • 本物の基板の厚みが1.308mmに対して、0.964mmと薄い
  • IHSも8つのアームが全体的に薄くなっている
  • 基板の前面にあるコンデンサーでは、保護材として使われている接着剤が不足している

これらは本物の7800X3Dを知らなければ気づきようがないことであり、また知っていてもオンラインに掲載された写真での判別は難しいだろう。

さらにDer8auer氏がダイからIHSをはぎ取ってみると、中にはチップがなかったという。本来なら「3D V-Cache64」を備えたCCD(CPUコアが集約されたダイ)とIOD(入出力担当ダイ)があるはずだが、いずれも存在しなかったとのこと。

今回の偽造品が凝っているのは、本来CCDとIODがあるはずの場所を盛り上げるためにカスタムCNC加工をしていたことだ、これは本物にはない工夫であり、もしも実際のチップに施された場合、冷却性能が向上していた可能性はあるが、この場合は「本物らしく見せかける」手口の一つでしかない。


Der8auer氏は、信頼できる販売業者や小売店から購入すること、メーカー保証が受けられない個人からは買わないこと、不当に安い価格であれば警戒するよう注意を呼びかけている。

何の機能もないニセモノにこれほど加工の手間がかかっていることは驚きだが、人気製品であればそれでも十分に利益は出るということだろう。現物を手に取って確認できないオンライン販売、まして詐欺師の逃亡がたやすく追跡は事実上不可能なマーケットプレイスでは、慎重に慎重を期すのが無難なようだ。

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