アイルランドのXはまだTwitterだった

X(旧Twitter)、EU数百万人の個人データをAI強化学習に使用の疑いで欧州当局から訴えられる

Image:xAI

X(旧Twitter)の欧州プライバシー監視機関であるアイルランドのデータ保護委員会(DPC)は8月6日、X Premium/Premium+加入者が利用できるXのAIチャットボットGrokに関し、高等法院に苦情申し立てを行った。

アイルランド放送協会RTEによると、DPCの申し立てはGrokのAIモデルの強化学習のためのユーザーデータ処理に関する懸念から、Xのアイルランド支社であるTwitter Internationalに対して差し止め命令を求めている。監視機関は RTE に対し、この問題がユーザーの権利と自由に緊急のリスクをもたらすと考え、行動を起こしていると語った。

Grokは、Xの説明によると「ユーザーのほぼすべての質問にウィットとユーモアを交えて答え、役に立つ洞察力のある回答も提供する」ように設計されている、ChatGPTのようなAIチャットボットのこと。ユーザーは、公開されている投稿やエンゲージメント活動を、このAIチャットボットの使用する大規模言語モデルの改善のために使わせるか否かを決定できるようになっていた。「なっていた」と記した理由は、Xが先月、ユーザーデータをGrokのAIモデル訓練のために使用するという規定変更を、ユーザーの同意を得たり、通知したりすることなく実施したからだ。

EUのデータ保護規則(GDPR)では、あらゆる個人情報の処理には有効な法的根拠が必要だと取り決められている。この規則に違反した企業には世界売上高の4%に相当する罰金が科せられる可能性がある。これは収益の改善に苦しむXにとっては大きな損失になる可能性がある。

今週初めには、イタリアの消費者団体Altroconsumoは、AIツールによる個人データの利用と、Xの2023年9月に更新されたプライバシーポリシーにおける個人データ処理の法的根拠の欠如について懸念を表明している。

6月には、FacebookやInstagramなどを展開するMetaが、GDPRに関する苦情とDPCを含む規制当局からの圧力を受け、ユーザーデータをAIトレーニングに再利用する(今回のXと)同様の動きを一時停止すると発表している。

DPCの申し立てに対し、XはDPCの対応が「不当で行き過ぎであり、何の根拠もなくXだけを標的にしている。これは非常に憂慮すべきことだ」と反論した。

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