AIチップ不足は数年続くかも
TSMC、NVIDIA CEOからの専用パッケージング製造ライン要請を断ったとの報道
台湾の半導体受託製造メーカーTSMCが、NVIDIAのCEOであるジェンスン・ファン氏からNVIDIA製品専用のパッケージング製造ラインの設立を要請されたが、断ったと報じられている。全世界が生成AIブームに沸き、AIチップの中心にあるNVIDIAの供給能力が制限されるとすれば、今後は大きな影響が予想される。
半導体のプロセスルール(回路線幅)微細化が限界に迫るにつれ、パッケージング技術の重要性が増しつつある。パッケージングとは、複数のチップを1つのパッケージにまとめる工程であり、シリコンウェハー上に集積回路を構築する「フロントエンド」(前工程)に対して「バックエンド」(後工程)」の1つに位置づけられる。
台湾メディア聯合報によると、ファンCEOはTSMCに自社専用のCoWoS(先進パッケージング技術)製造ラインの構築を要請したものの、丁重に拒否されたという。TSMC上層部はファン氏に質問を投げかけ、現場は緊迫感に満ちていたと報じている。
ここ数年のTSMCは、かなりのリソースをパッケージング能力の拡充に注いでいる。最近の決算説明会でも、同社はウェハー製造に加えて、チップ組立による高収益を追求する「Foundry 2.0」をめざす方針を掲げていた。そこにはバックエンド全般、すなわちパッケージングのほか「テスト、マスク製造やメモリ製造を除くすべてのIDM(垂直統合)」も含まれるという。
パッケージング能力の制約は、AIブームへの逆風として早くから懸念されていた。TSMCもパッケージングの発注をさばくのに苦労しており、キャパシティのほとんどをNVIDIAとAMDのために確保しているとの報道もあった。
TSMCは2023年のパッケージング市場のうち28%を占めており、シェアをさらに拡大する計画である。特にCoWoSの需要は逼迫しており、2026年まで緩和の兆しはないと見られている。
マイクロソフトやアマゾンなどハイテク大手もNVIDIAへの依存から脱却すべく、独自AIチップを開発・投入しているが、それらは最終的にはTSMCが手がけることになるため、しばらくAIブームにはブレーキが掛かり続けるかもしれない。