バックアップはこまめに取りましょう
強固なセキュリティが仇に。メッセージが復元できず、iMessage使用禁止を米機関が検討
iPhoneのiMessage(メッセージアプリ)は厳重な暗号化によりプライバシーを保護しているが、それが仇になることもあるようだ。米シークレットサービスが、2021年1月6日の連邦議会襲撃事件に関するテキストメッセージを紛失してしまい、その原因の1つがiMessageを使っていたためだと報じられている。
米政治メディアPoliticoによると、原因の1つは同機関が導入した新型のモバイル端末管理システムが、iMessage内の暗号化されたメッセージにアクセスできなかったためだという。このシステムは各職員のモバイル端末内にある電子メールや写真などのデータを自動的にバックアップして一元管理するものだが、アップルの暗号技術は突破できなかったようだ。
そのため、それぞれの職員がiPhoneをリセットする前に手動でバックアップを取っておく必要があった。しかし、多くのメンバーがこれを怠ったまま、新たな管理システムへと移行した。その結果、iMessageを通じたすべてのテキストメッセージが永遠に失われてしまったわけだ。
シークレットサービスは、今後このようなことが起こらないように、全職員に支給したiPhoneでiMessageの使用停止を検討しているという。もっとも、同機関の広報担当者は「どのような措置を執るのであれ、我々の警護や捜査の任務に悪影響を与えないようにしたい」と述べ、「他の技術的な解決策も検討している」とも付け加えている。つまり、決定事項ではないようだ。
実際にシークレットサービスがiMessageを無効にすると、他の機関との緊急連絡に支障が出るとの懸念も伝えられている。実際、1月6日の当日にも議会警察の署長がシークレットサービスの職員に助けを求めるメッセージを送っていたそうだ。
シークレットサービスは、大統領の警護という広く知られた任務に加え、多くの複雑きわまるサイバー犯罪の捜査を指揮する部署でもある。そうした立場にありながら、重要なデジタルデータのバックアップを取っていなかったことに対して、サイバーセキュリティの専門家らも驚きを露わにしている。
米政府のセキュリティ部門でさえ破れないアップルの暗号技術は、あらためて堅牢性が証明された格好だ。もっとも、まさに1月6日の暴動に参加した人物がiPhoneを海に投げ捨てたものの、iCloudデータが裁判の証拠として採用されたこともある。アップルのエコシステムは、政府にとっても犯罪者にとってもままならないようだ。