廉価モデルもコストダウンが難航
Apple Vision Pro、第2世代機は一時棚上げ?廉価モデル開発に集中か
今月末、アップルは空間コンピュータ(MRヘッドセット)「Vision Pro」を日本でも発売予定だ。米国価格で3500ドル、国内価格も60万円近い高価な製品だが、同社は第2世代となるハイエンド版(通称「Vision Pro 2」)と、機能を削減した廉価モデルを並行して準備中と噂されてきた。
だが、ここに来てアップルはハイエンドモデルの開発を一時中止し、廉価モデルに専念しているとThe Informationが報じている。
同誌によると、アップルは少なくとも1つのサプライヤーに、次期ハイエンドモデルの作業を中断したと伝えたという。その一方で、機能を減らした廉価モデルの開発を2025年末までの発売をめざして進めているとのことだ。
お手ごろ価格モデルは、ハイエンドのiPhoneと同程度の1500ドル前後を想定しているようだ。この価格であれば、発売当初の「Meta Quest Pro」並(現在は400ドル下げて1099ドル~)であり、一般的なVRヘッドセットと競合する位置づけとなる。
初代Vision Proの売れ行きが思わしくないことは、著名アナリストMing-Chi Kuo氏も述べていた。同氏のブログによれば、2024年内の米国向け年内出荷台数を市場コンセンサス(マーケット関係者の平均的な見解)の70~80万台から40~45万台に減らしたという。年次開発者会議WWDCでのvisionOS 2を発表を待って、販売地域を広げざるを得なかった事情が窺える。
アップルはもともと、Vision製品を複数のモデル構成にするつもりだったという。つまり第2世代のハイエンドモデルが安価なモデルと並ぶという、iPhoneのようなビジネスモデルを思い描いていたようだ。が、少なくとも現時点では、次期モデルは廉価版のみになるようだ。
また、第2世代のハイエンドモデルに割り当てられた開発スタッフは、昨年から徐々に減らされており、より安価なモデルに軸足が移っていったとされている。
しかし、その廉価モデルでさえ、エンジニアリング上の課題に直面しているとのこと。アップルは体験を大きく損ねずに、コストダウンの手法を探ることに苦労しているようだ。また、初代モデルで批判が集中している重さも考慮しており、最低でも3分の1は軽くしようとしていると伝えられている。
今回の報道では、廉価モデルの開発は2022年に始まったとされるが、途中経過は昨年半ばにBloombergが報じていた。内蔵スピーカーを取り除いてAirPods Proに代用させる、3Dカメラ等の機能を削る、製造プロセスを合理化してスケールメリットを引き出す、という具合だ。
しかし、妥協できない点もいくつかあるという。その最たるものは、装着者の目を映し出すスクリーン「EyeSight」だ。そもそも、室内で1人で着用しがちなMRヘッドセットには不要ではないかとの声も上がっていたが、アップルとしては譲れないようだ。
またThe Informationによれば、アップルは最も高価な部位であるハイエンドディスプレイも廉価モデルに残したいと考えているという。現在、このパーツは日本のソニーが独占供給しているが、安価な中国サプライヤーに切り替えを検討しているとの報道もあった。たとえ廉価モデル1本に絞ったとしても、まだまだ道は険しいかもしれない。
- Source: The Information
- via: 9to5Mac