タイルは剥がれフラップはちぎれたものの、制御は失わず
SpaceX「Starship」、4度目の飛行試験で大気圏再突入。制御着水に成功
6月6日、SpaceXの大型ロケット兼宇宙船「Starship」は、フルサイズバージョンでの4度目となる飛行試験を実施した。サターンVロケットの2倍の水力を持つ、過去最大かつ最も強力なロケットであるStarshipは、米テキサス州にあるSpaceXの打ち上げ施設Starbaseの発射台から離陸し、メキシコ湾上空を東方向に向けて上昇した。
メタン燃料を使用する33のRaptorエンジンは、2基が途中で燃焼しなくなったものの、打上げへの影響はないように見えた。
Starshipは、「Super Heavy」と呼ばれる1段目ブースターを分離する直前に、2段目のエンジンを点火する「hot staging」操作を実行、そして分離完了後に、hot staging用の中間段も分離した。SpaceXによれば、中間段の分離は再突入時~着陸時の機体重量を減らすための措置とのことだ。
今回の打上げの主な目標はふたつあった。ひとつはSuper Heavyをメキシコ湾に軟着水させること。もうひとつは、Starship本体であるロケット上段を、制御を維持した状態で再突入させることだった。
そして、Super Heavyは過去の試験飛行のように制御不能に鳴って爆発したりすることなく、予定どおり着水したように見えた。
一方Starshipは、打上げから約50分後に大気圏への再突入を開始した。前回の再突入では、姿勢制御スラスターの故障のために誤った姿勢で再突入した結果、途中で通信が途切れ、機体は分解、消滅したと推測されている。しかし今回は、降下中に耐熱タイルや姿勢制御用フラップの1つが焼けて脱落するのが見え、さらにカメラ映像が何度か途切れてしまうことはあったものの、映像は回復を繰り返して状況を伝え続け、最後はレンズがひび割れても機能していた。
そして最終的に、Starshipはインド洋上空でRaptorエンジン3基を再点火。フラップを一部失った状態ながらも、姿勢を水平状態から着陸~回収を想定した垂直状態に戻して降下し、最後の段階(打上げから1時間5分過ぎ)では非常にゆっくりと着水した。
SpaceXのCEO・イーロン・マスク氏はX(旧Twitter)に「たくさんのタイルが失われ、フラップが損傷したにもかかわらず、Starshipは海にソフトランディングした!」と投稿し、SpaceXの従業員らを祝福した。
今回の試験飛行で発生した、一部Raptorエンジンの故障や姿勢制御フラップの損傷、そして再突入時に発生した熱保護システムの動作不良については、米連邦航空局(FAA)の調査案件になってもおかしくなさそうなものだった。しかし、SpaceNewsによると、今回FAAはこれらについて死傷者や第三者の財産被害、または承認された危険区域外への破片の飛散につながらない限り、調査は不要だと述べたとのことだ。
マスク氏は数日前、Starshipの機体から耐熱タイルが剥がれて再突入時に故障することもあり得ると述べていた。実際に今回の試験飛行でもタイルが剥がれたが、結果的に帰還を果たしたことについて、マスク氏はそれが「高温下でのステンレス鋼の驚異的な耐久性を物語っている」としている。そして今後さらに、Starshipの機体に使用されているステンレス鋼合金をさらに改良し、さらに高い温度に耐えられるようにすることで、宇宙船としてより頑丈にしていくと述べた。
SpaceXのエンジニアは当然ながら、一部Raptorエンジンに発生した原因を調べる予定だ。また、耐熱タイルの脱落を修正しするため熱保護システムにも変更を加えるかもしれない。とはいえ、FAA調査もないため、5度目となる次回の試験飛行は、数か月ほどの間に実行されることになるかもしれない。
- Source: SpaceX
- via: Spaec.com SpaceNews Ars Technica