完全リモートは昇進なし
リモートワークの先駆けDell、オフィス復帰状況を従業員バッジやVPNで追跡か
米Dell Technologiesは、新型コロナ禍が起こる以前からリモートワークを認めてきた。その歴史は10年以上前に遡り、ハイブリッドな労働文化の先駆けである。
しかし、今年2月には一転してRTO(Return-to-Office/オフィス復帰)の方針を発表。従業員を完全リモートとハイブリッドに区分し、後者は四半期毎に少なくとも39日は出社を義務づけ。そして前者には「2024年5月以降、昇進の対象外となる」とのポリシーを打ち出していた。
それに続き、同社は従業員がRTOポリシーに従っていることを確認するため、新たな追跡技術を導入すると報じられている。
ニュースメディアThe Registerの匿名情報筋は、DELLが従業員のバッジやVPN(仮想プライベートネットワーク)接続を追跡し、実際にオフィスに滞在している時間を確認していると述べている。
今やVPNは、遠隔地から社内LANにアクセスする上でリモートワークに必須のツールだ。また小型センサーを搭載したバッジを従業員に付けさせて出社状況を確認することは、最近の米大手企業では珍しくない。
さらにハイブリッドワーカーを追跡する方法には、色分けシステムも含まれるという。「バッジ追跡から得られる毎週の出社データを、企業の人的資本管理ソフトを通じて従業員が利用できるようにして、ステータスをまとめた色分け評価をする計画」とのこと。色は(おそらく信号やサッカーに倣って)青、緑、黄、赤の4つである。
ただし、管理職が許容できるレッドカードの数に関して一貫性は示されていないという。また、十分な頻度で出社していない人物は、同社のジェフ・クラークCOOに通報されるとの声も紹介されている。
そのクラーク氏は数年前、皮肉なことに「すべてリモートで可能にするためにこれだけの投資をしたのだから、もう以前には戻れないだろう」と述べていたことがある。
DELL従業員の何割が完全リモートワークなのか、正確には不明だ。The Registerによると、米国内の従業員は約50%、海外は66%だという。またBusiness Insiderは、全チームの10~15%がリモートだと報じていた。
これほど厳しいオフィス復帰ポリシーは、同社がレイオフをせず、従業員に自発的に辞めさせようとしているのではないかと疑う人もいるという。もっともDELL広報は「対面での繋がりが、イノベーションと価値の差別化を推進するために不可欠だ」とコメントしている。
しかし、オフィス復帰義務化の効果には疑問が残る。S&P500のリストに掲載された457社を調査したところ、それは企業価値を高めるどころか、労働者の士気に悪影響を及ぼすとの結論が出ていた。
また、1万8000人以上の米国人を対象とした調査データでは、仕事の柔軟性(リモートワークかハイブリッド化を選べる)が従業員のメンタルヘルスに効果があることも判明している。
- Source: The Register
- via: Ars Technica