店舗からの手数料や消費情報取得で利益
金利0%「Apple Payで後払い」に専門家が警笛。「借金を重ねてしまうかも」
アップルは7日の世界開発者会議(WWDC 2022)において、後払いシステム「Apple Payで後払い(Apple Pay Later)」を米国で導入すると発表した。これはApple Payの支払いを、利息や手数料なしで、6週間にわたる4回払いに分割できるいうものだ。
一見すればアップルに入る利益はなさそうだが、実はそうではなく、消費者は警戒すべきとのレポートが報じられている。
大学教授などのアカデミック関係者が執筆するニュースメディアThe Conversationにおいて、ビジネススクールの准教授Rajat Roy氏は、「アップルは消費者金融の世界で足場を固め、収益性を高めようとしている可能性が高い」との見解を述べている。
どうやって儲けるかといえば「アップルの顧客が後払いサービスをますます利用するようになれば、同社は加盟店手数料で利益を得ることになる。これはApple Payを顧客に提供する代わりに、小売業者がアップルに支払う手数料である」とのことだ。
手数料は比較的小さいが、短期間の与信を行うことにより、手数料が融資コスト(利息)を上回る。またアップルおよび同社と協力関係にあるゴールドマン・サックスも、貴重な消費データを得られるという。消費者の購買行動に関する貴重な知見を獲得することで、将来の消費・消費行動の予測に役立つわけだ。
また後払いサービスは、消費者にとっては都合がよさそうに見えるが、Roy氏によれば2つのリスクがあるという。
まず、後払いサービスが持続不可能な支出を後押しする可能性だ。Z世代やミレニアル世代などの若い層や低所得者層は、こうしたサービスの利用に伴うリスクを受けやすく、その結果、借金を重ねてしまうかもしれないという。
さらに信用格付けに影響を与える可能性もある。サービスの利用申請をする際、アップルは「ソフトな」信用調査を行うだけだという。信用情報機関にローンと示されるわけではないが、それでも支払いが滞ればクレジットスコア(米国での個人信用情報)に傷がつく恐れがあるとのことだ。
またBNPL(Buy Now Pay Later/今買って後で払う)方式での購入は、最新のガジェットや高級品を所有したいという欲求が加速することもある。この欲求が巧みなマーケティングにより呼び起こされており、後払いサービスも加わることで「現金を手放す痛みを感じることなく買い物するよう」消費者に仕向けられるというのだ。
後払いサービスで人気のAffirm社のCEOは、アップルの発表により株価が5.5%下落したものの、「心配していない」とBloomberg TVでコメントしている。「関係者全員にとって、成長の余地はたくさんある」というBNPLは、米国における取引のうち、アップルの決済が少ししか使われていないから、というわけだ。
それどころか同氏は、アップルのサービスがBNPLのサービスをより多くの人に知ってもらえることになり「我々にとって本当に良い追い風になる」と述べている。アップルはプライバシーの保護に力を注いでいるが、それと同様に「若者の消費行動を歪めない」ことに対する配慮も望まれそうだ。
- Source: The Conversation
- via: 9to5Mac