大手銀行は化石燃料関連企業などに融資する傾向があるため

預金する銀行を変えるだけで温室効果ガス排出量が75%削減できるとの調査結果

Image:Lamyai/Shutterstock.com

銀行にお金を預けている場合、特に地球環境に対して、なんら働きかけはしていないように思える。だが、実は金融機関を通じて化石燃料関連や、温室効果ガス排出量の多い製造業に貸し出すことで、知らず識らずのうちに地球温暖化に手を貸しているとのレポートが公表されている。

地球温暖化を止めて逆転させる方法を調査する非営利団体Project Drawdownは、銀行の影響力を活用するよう提言する調査報告を発表。それによると、平均的な米国人が1000ドル貯蓄するごとに、ニューヨークからシアトルまで飛行機で移動するのと同じ排出量を間接的に生み出しているという。

それらを気候変動に配慮した銀行に切り替えることで、排出量を約75%削減できると分かったとのこと。たとえば米国人の預金の中央値である8000ドルを移動させた場合、ベジタリアン食に切り替えた場合に減らせる排出量の2倍になると主張している。

銀行により、預金の融資先を炭素集約度(エネルギー消費単位あたりの二酸化炭素排出量)の高い企業にするか、気候変動に配慮した企業を選ぶかの程度が異なる。そのため、個人がどこで貯蓄するかにより気候変動を悪化させるか、あるいは緩和に貢献するかに大きな違いが生じる可能性があるというわけだ。

米国の大手銀行11行は、平均してポートフォリオの19.4%を炭素集約型産業に貸し出しているとのこと。石油やガス・石炭会社は、融資のおかげで化石燃料を生産し続けられる。また新たな化石燃料プロジェクトは、単なる一過性のものではなく、何年にもわたって操業し、将来にわたって一定の排出量を固定するとProject Drawdownは主張している。

同時に、大手銀行はグリーン経済(環境問題を軽減しつつ、持続可能な開発や発展を目指す)への融資が不足しているという。2022年は気候変動対策資金が1兆ドルの大台を超えた最初の年だったが、最悪の影響を緩和するには毎年少なくとも5倍に増やす必要があるとのこと。「このコストは2050年までに266兆ドルに上るが、同じ期間に無策を続ければ2000兆ドル超と推定されるコストと比べれば、微々たるものだ」と付け加えている。

そして中小銀行は、化石燃料産業に資金を提供する可能性は低い。なぜなら化石燃料の大企業は「数億ドル、場合によっては数十億ドル規模」の融資を求めているため、大手銀行に頼らざるを得ないからだ。

今回の報告書は、米国にある何千もの銀行の融資業務を徹底的に分析したものではないが、消費者が単に「預金口座をどこに作るか」だけで気候変動に大きな影響を及ぼしうる可能性を示したことが、大いに興味深い。

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