単純なことを複雑にする人もたまに見かけるけれど…

「ハトは人工知能と学習の仕組みが同じ」という研究結果

Image:OlegRi/Shutterstock.com

ハトは平和の象徴と言われる一方で、知能については決して高くないと考えられている。しかし新しい研究では、ハトが与えられた問題を解決するためにとるプロセスが、人工知能モデルと同様であることが報告されている。

研究の筆頭著者で、オハイオ州立大学の心理学教授ブランドン・ターナー氏は「ハトが学習するしくみが、現代の機械学習などのAI技術のしくみと驚くほど似ている」と述べている。

ハトは世界に300種類ほど存在しているが、今回の研究は、ショッピングモールにいる野性のハト24羽を対象として行われた。

実験では、ハトがさまざまな資格刺激に対し、関連するしくみを学習できるかどうかを確認した。ハトに刺激対象としてさまざまな形のマークを見せ、それに関連付けられたボタンをつつくことができれば、報酬として餌が与えられる。

その結果、難易度が異なる4つのタスクそれぞれにおいて、ハトは試行錯誤をしつつも正しい答えを見つけることが可能であることが示された。鳥たちは、与えられる刺激と、それに応じたボタンを次第に見つけることができるようになり、最も簡単な実験では、当初の正答率が平均55%だったところから、最終的にはほぼすべての問題を正解する95%まで改善していった。また難易度の高いテストでは、やや学習に時間がかかったが、こちらも平均55%から68%にまで向上した。

Image:Ohio State University

しかし、研究者らはハトが正しく答えたことよりも、その学ぶ過程により注目した。彼らは鳥たちが、二つのものを単に結びつける、つまり連想学習を使用したと考えている。

ターナー氏は「連想学習は、ハトが行ったような複雑な視覚的カテゴリ分類を説明するにはあまりにも原始的で単純な方法だと考えられている」と説明。「ハトは学習過程でルールをつくることがなく、単に試行錯誤と連想学習という総当たり的な方法を使い、特定の種類のタスクでは、人間よりも優れたパフォーマンスを発揮する」と実験の結果を評価している。

とくに、今回のように単純な作業をこなす場合は、ハトの学習方法は仕事を簡単にしようとしてルールを考えた結果、かえって煩雑にしてしまう人間の学習方法よりも効率的だと言えるかもしれない。

そして研究者らは、ハトが採用したと考えられる学習方法、つまり連想学習とエラー検出を使用する単純なAIモデルを用意して、同様の問題を解決できるかを試し、良好な結果を得た。

「われわれの研究結果は、自然がハトにおいて、人間のように一般化したり外挿したりする能力を持たない、信じられないほど効率的な学習者を作る方法を見つけた可能性があることを示唆している」とターナー氏は述べ、「私たちは人工知能を設計した自分たちの賢さを称賛すると同時に、ハトを頭の悪い動物と考えているが、AIマシンの行動を導く学習原理は、ハトのそれと非常によく似ている」と説明した。

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