配布だけでなく、AI学習にも著作物を無断使用の疑い

生成AI「Claude 2」が歌詞を無断配布したとして、ユニバーサルミュージックがAnthropicを提訴

Image:faithie/Shutterstock.com

ユニバーサルミュージックがAIスタートアップ企業のAnthropicを提訴した。この企業が開発するAIモデル「Claude 2」が、著作権のある歌詞をそのまま出力することが、著作権を侵害しているとのことだ。

訴状では、Claude 2が出力する歌詞の例として、ケイティ・ペリーの「Roar」、ザ・ローリング・ストーンズの「You Can’t Always Get What You Want」などの楽曲の歌詞が、ほぼそのまま配布されていると言う。

さらにClaude 2が出力する詞には、既存の楽曲の歌詞に非常に類似したフレーズが数多く含まれており、楽曲を再現するよう指示されていなくとも、何らかの楽曲の歌詞が含まれていると主張している。たとえば「バディ・ホリーの死に関する歌詞を書いて」と指示すれば、ドン・マクリーンの名曲「American Pie」の歌詞がそのまま出力されるとのこと。

洋楽に詳しい人なら、この楽曲がロックの黎明期に活躍したミュージシャン、バディ・ホリーが乗った飛行機の墜落事故について歌っているとされていることを知っているだろう。最近ではApple TV+で配信されているトム・ハンクス主演の映画「フィンチ」のエンディングに、印象的に使用されていたので、聴き覚えある方も多いはずだ。

インターネット上で歌詞が共有されることは新しいことではないが、楽曲と同様その歌詞にも著作権はあり、多くの正規サービスやウェブサイトはライセンス料を支払って歌詞を掲載している。そのため、これらの歌詞はコピー&ペーストすることができなくされている場合も多い。

しかし、Claude 2は歌詞をテキストとしてほぼそのまま書き出し、一方で歌詞の使用に必要な著作権管理情報の記述はない。ユニバーサルはAnthropicが許可なく著作権付きの素材を配布するだけでなく、これらを言語モデルのトレーニングに使用しており「Anthropicの著作権侵害は革新ではなく、俗語で言えば窃盗だ」とした。

生成AIが急速に一般に広まった後、ChatGPT、Stable Diffusion、Midjourneyなどによる著作権侵害は、保護されたデータの無断使用や著作権保護された芸術作品またはそれに類似した結果に関する複数の訴訟が提起される事態を巻き起こしている。

Anthropicは、信頼性と安全性を重視しているとし、AIシステムに一定のルールを守らせる方法を研究していると述べているが、今回の訴訟ではまだ対策が有効に機能するまでには至っていないのかもしれない。ちなみにAnthropicに対して、米アマゾンは40億ドル、Googleは3億ドルを投資している。

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