信頼関係が破壊されて修復不可かも

新料金体系が反発を招いたUnity、殺害予告を受けてオフィスを一時的に閉鎖

Image:T. Schneider/Shutterstock.com

ゲームエンジン大手のUnityが来年初めから新たなライセンス価格体系、具体的には一定規模のゲームタイトルに対して「1インストールごとにランタイム料金が上乗せされる」仕組みが大きな物議を醸している。単に開発者の負担が増えるだけでなく、再インストール時にまで料金が請求されることが理不尽と受け止められたからだ。

こうした混乱のなか、Unityの広報担当者は「オフィスの一部に潜在的な脅威があることを知らされた」、つまり殺害予告があったと示唆。最優先事項として従業員の安全を確保するため、2日にわたり「標的となりうるオフィスを閉鎖し、警察当局の捜査に全面的に協力している」との声明を出した。

今回のオフィス閉鎖により、ジョン・リッチティエロCEOが行う従業員タウンホールミーティング(経営陣との対話の場)の予定がキャンセルされたとのことだ。

ゲーム開発コミュニティは、Unityの新たな料金体系に対して一致団結。名だたるインディーゲーム開発スタジオも、そろって異議を唱えている。

たとえば宇宙人狼ゲーム『Among Us』でブームを巻き起こしたInnerslothも「我々ばかりか、あらゆる予算や規模のゲーム開発スタジオにとっても有害だ。これがまかり通れば、プレイヤーが移植を望んでいるコンテンツや要素の実装が遅れることになる」と抗議を表明。

また、デッキ構築型ローグライクゲーム『Slay the Spire』開発元のMega Critは、2年以上にわたってUnityで新作を開発してきたが、新料金体系は「開発者、特にインディーズにとって有害なばかりか、信頼の侵害だ」と批判。さらに「変更が完全に撤回され、(利用規約の)保護措置が講じられない限り、新しいエンジンに移行する」と宣言している。

さらに大人気サンドボックスゲーム『Garry’s Mod』やUnityベースの『Rust』を開発したGarry Newman氏も「Rust 2は間違いなくUnityのゲームにはならない」と明言。

そして激怒している理由がコストではなく「こんなことになるとは聞かされていなかった。警告もされなかった。相談もされなかった」からだとして「信頼はもうない」と述べている

単に利用料金の折り合いが付かないだけであれば、Unityと開発者らの歩み寄りも可能だろう。しかし、信頼関係が破壊されたとなれば、元のさやに収まるのは不可能に近そうだ。

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