どちらも貴重な情報をもたらすミッション

JAXA、X線分光撮像衛星「XRISM」および小型月着陸実証機「SLIM」の打ち上げに成功

Image:JAXA

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、9月7日に種子島宇宙センターからX線分光撮像衛星「XRISM(X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission/読み:くりずむ)」の打ち上げに成功した。

XRISMは、JAXAが主導し、NASA・ESAとの協力によって開発された最も先進的なX線分光撮像衛星。JAXAの説明によると「銀河を吹き渡る風である『高温プラズマ』のX線精密分光撮像を通じて、物質やエネルギーの流転を調べ、天体の進化を解明」することを目的としている。

JAXAは2016年にXRISMの前身とも言えるX線観測衛星「ひとみ」を打ち上げたが、姿勢制御系のトラブルによって期待が破損してしまったため、ごく短期間の運用でその役目を終えてしまっていた。

XRISMは「ひとみ」が搭載したX線マイクロカロリーメーター「Resolve」やX線CCDカメラ「Xtend」を搭載しつつ、「ひとみ」よりも観測機器構成を簡素化している。しかし、Resolveの性能は、400から1.2万電子ボルトのエネルギーのX線を検出できるという。これは、宇宙の最も暑い領域、最大の構造、最も強い重力を持つ観測対象に関する情報を取得できると説明されている。

おそらくこれでは何が何だかわからないと思われるので、比較対象を挙げると、NASAが運用しているチャンドラX線観測衛星よりも30倍高い精度での観測が可能で、爆発する恒星、ブラックホールおよびそれらによって駆動される銀河、銀河クラスターなどのX線源をより精細に観測できるとのことだ。NASAのXRISMプロジェクトの科学者ブライアン・ウィリアムズ氏は、この観測機器が「中性子星の内部構造や活動銀河のブラックホールによって駆動される光速に近い粒子ジェットの内部構造など、研究が最も難しい部分に対する洞察を提供するだろう」と述べている。

また、ミシガン大学の天文学者でミッションにも参加しているリア・コラレス氏は、XRISMについて「X線観測の次の段階を表す」機器だと説明した。

XRISMは打ち上げ後、太陽電池パネルの展開も順調に完了している。ただ、観測を行うには機器の細かな調整作業が必要であるため、観測開始は年を越してからになるとのことだ。

Image:JAXA

なお、今回の打ち上げには、XRISMとともにJAXAの小型月着陸実証機「SLIM(読み:すりむ)」も相乗りしていた。SLIMは分離後、自身の推進システムを使用して月へと向かい、3~4か月後に月軌道へ到達する予定だ。そして、打ち上げ後4~6か月後に月面へと降下し軟着陸を試みる。

この小型着陸機は「ムーンスナイパー」とニックネームが付けられており、ターゲット地点から100m以内にピンポイントで着陸する技術実証がその目的だ。SLIMでは専用の計算効率の高い画像処理アルゴリズムを開発しており、これによって「降りやすいところに降りる」のではなく「降りたいところに降りる」重力天体探査を実現するという。

また着陸が成功すれば、SLIMは月の起源を探るため着陸地点に露出しているとされる月のマントルの組成などを調べるとのことだ。

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