太陽系のタイムカプセル
小惑星リュウグウのサンプルから、太陽系より古い物質「プレソーラー粒子」発見
JAXAの「はやぶさ2」ミッションは、2020年末に小惑星「リュウグウ」のサンプルを地球に持ち帰ることに成功し、はやぶさ2は現在、新たに小惑星「1998KY26」を目指して航行中だ。そして、届けられたリュウグウのサンプルは分析研究が進められ、2021年にはリュウグウに炭素、窒素、酸素といった生命誕生に必要な成分が存在することが発見され、さらに2022年の研究では、水が存在した痕跡の証拠や、太陽系でも最も古い岩石の一部を発見したと報告された。
そして、Science Advances誌に最近掲載された研究報告では、リュウグウのサンプルの一部(C0002およびA0040)に含まれるいくつかの粒子(全58個)に、他の部分とは明らかに組成が異なる成分が存在することがわかったという。
見つかった特徴的な58個の粒子のなかには、他よりも硫黄と鉄が豊富に含まれ、マグネシウムやケイ素、酸素が他より少ないものがあった。それらは「プレソーラー粒子」と呼ばれる、太陽が形成されるよりも前に作り出された微細な固体粒子状の星間物質が含まれる物質だった。つまり、この粒子はリュウグウが形成される過程で、どこかからやって来た別の天体が衝突して、その成分が留まったものと考えられる(リュウグウは、かつてはより大きな小惑星の一部だったが、衝突によって分裂したと推測されている)。また、一部の粒子には超新星由来の痕跡もあった。
プレソーラー粒子の形状は、ほぼ回転楕円体になっている。それらは 1980年代に初めて確認され、天文学者によって研究されてきた。そして、プレソーラー粒子は星間雲の中で形成される天体の前駆体だと考えられている。
研究者らは、これらサンプル番号C0002とA0040に含まれる粒子についてさらに詳細に調べた。すると、50個の粒子には炭素13が豊富に含まれていたが、残りの8個には炭素13が含まれていなかった。これらの粒子のほとんどは、おそらく太陽と金属含有量が同等かそれより低い「漸近巨星分枝(Asymptotic Giant Branch:AGB)星」の周辺で形成されたと考えられる。AGB星は、太陽クラスの恒星が燃え尽きる前に移行する段階だ。また、一部の粒子には太陽誕生以前の超新星由来の痕跡もあった。
一連の分析結果をまとめて考えると、リュウグウの元になった天体はおそらく太陽系の端で形成され、重力の相互作用によって現在の軌道に引き寄せられた可能性が考えられるという。
今回分析されたサンプルはいずれも1mm程度の大きさしかなく、発見されたプレソーラー粒子にいたっては数μm(マイクロメートル)しかない。この、うっかりくしゃみでもすればどこかへ消し飛んでしまうようなサンプルに、太陽系の起源やそれ以前の宇宙に関する多くの情報が含まれているというのは、われわれ素人からすれば驚くばかりだ。
ちなみに小惑星からのサンプルリターンと言えば、NASAの「OSIRIS-REx」が現在小惑星ベンヌのサンプルを携えて帰還の途にある。サンプルを格納したカプセルは9月24日に地上へ届けられる予定だ。
- Source: Science
- via: Ars Technica