熱核推進システムはBWX Technologiesが担当
NASA、火星目指す「核熱推進ロケット」開発企業にロッキード・マーティンを選定
NASAと米国防高等研究計画局(DARPA)は、火星を目指す宇宙ロケット兼宇宙船の開発企業として、ロッキード・マーティンを選定したと発表した。
Demonstration Rocket for Agile Cislunar Operations(DRACO)と呼ばれるこのロケットは、エンジンとしてBWX Technologiesの核熱推進(NTP)システムを採用する予定となっている。NTPは一般的な科学燃焼式の宇宙ロケット用エンジンに比べ、数倍高効率であり、より遠くへ、より早く移動することを可能にする。
エンジンの効率が良ければ、同じ距離を航行するのに必要とする燃料が少なくなるため、予期せぬ事態によって急遽帰還の途につく必要が生じたときにも、より多くの選択肢を検討できる。これらのことから、近年NTPは火星探査における理想的な動力として主流になる可能性がある。DRACOプログラムは2027年までに実証機を打ち上げることを計画している。
核熱推進のしくみを説明すると、原子炉の熱によって敵対水素などの極低温燃料を急速に加熱、膨張したガスをノズルから噴出して推進力を得る。NTPの燃料には高純度低濃縮ウラン(HALEU)を用いるため、極めて高い安全性と信頼性を担保して設計される。
NTPにはロケット推進以外にも重要な役割を担う可能性がある。それは将来月や火星に居住施設を作り、そこで飛行士らが活動する際のエネルギー源としての利用だ。NASAは2018年に、小型でポータブルなバージョンのNTPをテストしている。また、将来的に地球と月の間(シスルナー)空間における探査機や宇宙船の推進力としてもNTPが活用される可能性が、当然ながら考えられている。
ロッキード・マーティンの月探査プロジェクト担当副社長カーク・シャイアマン氏は「安全で再利用可能な核熱推進の宇宙船は、シスルナー空間に革新をもたらすだろう。より速く、機敏に、そしてコントロール性のある核熱推進は、シスルナー空間の国家安全保障にも多くの応用が考えられる」と述べている。
ちなみにNTPは特に新しい技術ではなく、NASAは50年以上前にも核熱ロケットエンジンのプロトタイプの試験を実施していた。ただ、このときはNASAの予算削減と冷戦による世界的な影響で開発が中止された。