Skylab計画に似ている
SpaceX、Starshipを宇宙ステーションとして使う構想を明かす。NASAも関心
SpaceXが、将来的にStarshipを商業用宇宙ステーションとして運用する構想をNASAに提案している。Starshipはまだ一度も軌道に到達したことがなく、これはまだごく初期段階の話だ。ただ、現在低軌道上にある国際宇宙ステーション(ISS)は2030年以降に廃止される予定なので、微重力環境の研究施設としての役割を引き継ぐ代替案が求められており、NASAはStarshipアーキテクチャーを別の用途に活用するための技術協力をしていく姿勢を示している。
NASAは6月、SpaceXを初めとする民間の航空宇宙企業7社との協力によるCollaborations for Commercial Space Capabilities(CCSC)と称するプログラムを発表した。CCSCはいまから5~7年後に、NASAやその他の顧客のための新たな民間セクターの開発を進める取り組みだ。また、NASAは資金提供は行わないものの、技術的な専門知識、評価、知見や技術、その他蓄積してきたデータなどで民間の開発を支援する。
今回のSpaceXとの協定において、NASAはStarship宇宙ステーションの概念を含む「統合低軌道アーキテクチャー」の構築について協議している。これには、Starship宇宙船とSpaceXの他のプログラム、Crew Dragon宇宙船とStarlinkのネットワークの活用が含まれるとのことだ。
ただ、Starshipを宇宙ステーションとして運用するために、この宇宙船兼ロケットの内部全体を飛行士の居住空間に転換するというアイデアについては、まだ具体的に何をどうするかが明確化されていない。これを実現するには製造と組み立ての面で大きな進歩が必要になる。一方、Starshipのキャビンはすでに十分な広さがあると考えれば、適切な生命維持システムを積み込むことで、低軌道上に長期滞在できるようになる可能性は考えられる。
SpaceXは今回の構想とは別に、Starshipを月だけでなく火星やその先の有人探査、深宇宙輸送手段として提案しており、NASAはその構想に基づいて、Artemis計画における有人着陸船のひとつとしてStarshipに対して29億ドルの契約を与えている。
さらにStarshipは、世界の主要な都市を宇宙経由で結ぶ、旅客輸送用の機体として使うことも想定されている。NASAの商業宇宙飛行部門を率いるフィル・マカリスター氏は「Starshipには乗組員および貨物輸送に大きな影響を与える可能性があり、またそれ自体が大規模かつ商業的な低軌道上の目的地になるかもしれない」と述べている。
NASAは技術的な観点から、SpaceXの提案は既存システムの利用、実証された技術的能力、他の企業や組織への依存度が低い点などが利点だとしている。しかし、SpaceXの提案にはコンセプトの詳細部分が不足しており、技術的リスクや、今後5~7年でどうやってStarshipを地球低軌道への乗組員輸送や周回宇宙ステーションとして利用できるようしていくのかを示すスケジュール(NASAの共同商業宇宙協定の指針となる目標の1つ)に関する情報が不足しているとした。しかしそれでも、NASAは今回の提案に妥協するつもりはなく、SpaceXの持つ技術的な強みが、提案自体の弱点に優ると考えている。
ちなみに、ロケットとして打ち上げられた構造物を宇宙ステーションの建設に使おうというアイデアは、これまでまったくなかったわけではない。たとえば1960年代にNASAの技術者が、打ち上げ後のサターンIBロケットの水素タンク内に必要な機器を設置して空気を充満させ、内部を居住スペースとして流用するアイデアを考案していた。これは後に、サターンV 型ロケットの第三段S-IVBを改造した、Skylab宇宙ステーションへと発展した。
- Source: Ars Technica