航空機も高効率低燃費の時代へ
GE、90年代に消えたプロップファン型航空機エンジンを復活へ。約20%の低燃費化目指す
米GE Aerospaceは仏Safran Aircraft Enginesと共同で、プロップファンエンジンと呼ばれる航空機用プロペラエンジンを開発していることを明らかにした。この開発は現在世界最速を謳うスーパーコンピューター「Frontier」によってシミュレーションを繰り返しており、今後5年ほどの間に、エアバス社のテスト機に搭載される予定だ。
プロップファンエンジンは、その形状からオープンローターエンジンとも呼ばれ、航空機用ジェットエンジンとしてポピュラーなターボファンエンジンと同等の飛行速度と、プロペラ機用として活躍するターボプロップエンジンと同等の低燃費というメリットを併せ持つエンジンとして、かつては1960~1980年代後半にかけて開発されていた。ところが1989年にOPECが石油の禁輸措置を解除、石油価格が暴落したことによって、低燃費なプロップ型よりも高速飛行が可能なターボファンエンジンの優位性が高まり、プロップファン型エンジンも姿を消していた。
その後潮目が変わったのは2000年代あたりで、石油価格の上昇と、航空業界の脱炭素化の方針で低燃費高効率エンジンが求められるようになり、GEの航空機部門は再びプロップファン型エンジンの実用化に向けた開発を再開していた。
プロップファン型エンジンの外観的な特徴は、ひとつのエンジンの同一軸上に2つのプロペラが装着され、互いに反対方向に回転する二重反転プロペラ方式となっているところ。通常のターボプロップエンジンは、飛行速度を高めていくと、飛行速度が約700km/hを超えたあたりでプロペラ先端の対気速度が音速を超え、衝撃波の発生によって損失が増加してしまう。そのため、それ以上の速度をプロペラ式で実現するために考えられたのが二重反転プロペラを持つプロップファン型エンジンだ。ウクライナのアントノフAn-70は、この二重反転プロペラ方式のプロップファン型エンジンを搭載する数少ない航空機となっている。
一方、GEが開発しているプロップファン型エンジンは、高速回転するプロペラの後方に気流を整えるための可変ピッチ式ステーターブレード(固定ブレード)を備える方式となっている。
GEは、このエンジンの開発で自社の数値流体力学ソフトウェアをスーパーコンピューター「Frontier」に組み合わせ、100回以上のシミュレーション試験を完了。「フルスケールのオープンファン設計における空気の流れを、驚くほど詳細にシミュレートできた」と、その成果を説明している。またプロトタイプもすでに製作されており、こちらもすでに地上で約400回を超える試験を実施済みとのことだ。
GE Aerospaceの副社長兼エンジニアリング部長のモハメド・アリ氏は「革新的な航空機エンジンの開発には、革新的な技術力が必要になる。スーパーコンピューターを用いた解析により、GE Aerospaceのエンジニアは航空機の未来を再定義し、これまで不可能だった問題を着々と解決している」とコメントした。
GE AerospaceとSafran Aircraft Enginesは2021年に、持続可能な航空機エンジンのための革新的イノベーション実現のための取り組みとなる「CFM RISE」プログラムを発表。このプログラムには、プロップファン型エンジンをはじめとする高い技術を必要とする新エンジンの開発や、高度な熱管理、燃焼、およびハイブリッド電気機能の開発などが含まれる。そして開発する将来のエンジンが、現在最も効率的なエンジンよりも、少なくとも20%の燃費削減、そして20%のCO2排出削減を実現することを目指している。
- Source: GE Aerpspace
- Coverage: Cfm International