そこに AI はあるんか

説教もChatGPTで生成。“AI牧師”による礼拝がドイツの教会で行われる

Image:Inked Pixels/Shutterstock.com

独バイエルン州ニュルンベルクにほど近いファースの街で、ChatGPTが生成したキリスト教(ドイツ福音主義教会)の説教をAIで描かれたアバター牧師が話すという奇抜な礼拝が行われた。参列者は数百人にものぼったという。

「Now is the time」というタイトルのもと、約40分ほどで終了したというこの礼拝は、メニューに説教と祈り、音楽を含むもの。礼拝を行ったウィーン大学の神学および哲学研究者Jonas Simmerlein氏は「この礼拝は私が考案したものだが、98%は機械が作ったもの」だと述べている。

Simmerlein氏はタイトルとともに「ここは教会で、あなたは牧師、教会での礼拝はどんな感じになるだろうか」とChatGPTにたずね、詩篇の内容を含めて、最後に祈りと祝福を与えるよう求めたのだという。

その結果出力されたのが、この礼拝でのAI牧師の話だった。物珍しさもあってか、礼拝堂に集まった信者たちは、画面に映し出された男女4人のAIアバターが説く「過去を捨て、現在の課題に集中し、死への恐怖を克服し、イエス・キリストへの信頼を失うな」という言葉に熱心に耳を傾けていたという。

ただ、AIアバターのなかには、死んだような表情で「信仰を保つためには、定期的に祈り、教会に通うことが必要です」とぎこちなく話すものもあり、参列者の中から笑いも起こったという。また映像をスマートフォンのカメラで撮影する者もいれば、批判的な反応を見せる者もいた。

ある女性参列者は、礼拝が始まった最初こそ興奮と好奇心を覚えたが、次第に不快に感じるようになったという。「そこには心も魂もない」と彼女は言う。「アバターからは感情が感じられず、話に身振り手振りを交えることもない。早口で一本調子に話すせいで、その内容に集中するのが難しかった」と感想を述べた。

ChatGPTのエンジン部分である大規模言語モデル(LLM)は、出力内容を簡単に「でっち上げ」てしまう問題がある。そのため、思わぬところで教義内容においてこれまでにない「新解釈」を説き始めることもあり得そうだ。もしかすると、その新解釈を信じるか信じないかで争い事が発生する可能性もあるかもしれない。AIはただのコンピューターソフトウェアで、決して神様ではないことは、理解しておく必要がありそうだ。

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