AAAタイトルもそれなりに動かせる

“コスパ最高”の携帯ゲーミングPC。ASUS「ROG Ally」レビュー

ASUSはポータブルゲーム機「ROG Ally」(アールオージー エイライ)を6月14日に発売する。価格は10万9800円(以下、税込表記)だ。なお、6月14日に発売されるのは「AMD Ryzen Z1 Extreme」を搭載する上位モデルで、Ryzen Z1搭載の下位モデルは8万9800円で夏以降に発売予定となる。

ディスプレイの左右にコントローラーを搭載するゲーミングUMPC(ウルトラモバイルPC)は、2021年末あたりから、急速にその数を増やしている。だがROG Allyの約11万円という価格は、このジャンルでは低価格な部類になる。さらに安いSteam Deck(5万9800円〜)などのデバイスもあるが、同機が専用OSを搭載しているのに対し、ROG AllyはWindows 11を搭載したれっきとしたPCだ。キーボードやマウスを接続すれば、通常のPCとしても利用できる。

とはいえ、いくら安くてもゲームをプレイするためのデバイスである以上、性能が追いついていなければ意味がない。最近のPCは高いCPU性能やグラフィック性能を要求するタイトルも少なくないため、プレイしたいゲームがROG Allyでちゃんと動くのか、気になっている人もいるのではないだろうか。

そこで本記事では、ROG Allyの基本仕様を確認しつつ、いくつかのゲームを実際にプレイしてみた感想をお伝えしよう。

7インチのゲーミングPC

まずは基本仕様の確認だ。ROG Allyは7インチ/1920×1080ピクセルの液晶ディスプレイを搭載しており、質量は608g。外形寸法は280.0W×21.22~32.43H×111.38Dmmで、Nintendo Switchよりも1回りほど大きく、そして厚みを増したようなスタイルだ。

ディスプレイの左右にコントローラーを搭載しており、両側から掴んでプレイするスタイルはゲーム機そのもの。コントローラーはアナログスティックや十字キー(D-Pad)、A/B/X/Yボタンのほか、左右のバンパーボタンとトリガーボタン、そして背面にカスタマイズ可能なマクロボタンも備えている。

インターフェースとして、USB 3.2(Type-C/Gen2)と3.5mmオーディオジャックを装備。そのほか、ストレージ容量を拡張するためのmicroSDカードスロットと、同社の外付けGPUボックス「ROG XG Mobile」を接続するための専用ポートを備えている。

左から指紋センサー付きの電源ボタン、ボリューム、USB 3.2(Type-C)、ROG XG Mobile用ポート、microSDカードスロット、3.5mmジャック

本体のUSBが1ポートしかないため、充電しながら周辺機器を使用したり、外部ディスプレイに出力したりといったことはできない。別途USBハブなどを利用することになる。なお、この用途に使えるGaming Charger Dockが今夏発売予定なので、周辺機器をコンパクトにまとめたいという人はチェックしておくといいだろう。

Image:ASUS

SoCには、AMDのハンドヘルドPCゲーミング向けプロセッサーである「AMD Ryzen Z1 Extreme」を搭載。Ryzen 7040シリーズと同じ「Phoenix」(開発コードネーム)をベースにしており、CPUは8コア/16スレッド、GPUは12CUだ。性能的には、最近のゲーミングUMPC人気のきっかけとなったRyzen 7 6800Uよりも高く、今夏に搭載モデルが出てくるRyzen 7 7840Uと同等と考えて良さそうだ。

ただし、RAMのサイズは16GB(LPDDR5-6400)。今後登場するRyzen 7 7840UのゲーミングUMPCは64GB(LPDDR5X-7500)などのハイスペックモデルも予定されるため、このあたりで差はつくと考えられる。

実際のゲームのプレイ感は?

ここからは、肝心のゲームのプレイ感をお伝えしよう。プレイしたゲームは「BIOHAZARD RE:4」「Apex Legends」「Diablo IV」の3つだ。

Apex Legendsのプレイ画面

なお、ROG Allyは付属のユーティリティーツールである「Armoury Crate SE」から、動作モード(TDP)を切り替えられる。設定としては「サイレント(9W)」「パフォーマンス(15W)」「Turbo(25W)」の3種類があるが、Turboのみ電源接続時には30Wに引き上げられる。

今回は、すべて動作モードはTurbo(25W)にし、本体側の解像度は720p、リフレッシュレート120Hz、AMD RSR(Radeon Super Resolution)オンで検証してみた。

付属ユーティリティツールのArmoury Crate SE

まず「BIOHAZARD RE:4」は、ゲーム内のグラフィック設定は解像度1280×720ピクセル、リフレッシュレート120Hz、レイトレーシングはオフに設定。この状態でプレイすると、50~60fpsといったところだった。シーンによっては30fps台まで落ち、カクツキを感じることはあったものの、概ね問題ないプレイ感だ。すごく快適とは言わないが、十分に普及点と言って良いだろう。なお、この設定では約50分でバッテリー切れとなった。パフォーマンスモード(15W)にすればもう少し動作時間を延ばせると思うが、ゲームのリフレッシュレートや解像度を下げるなどの対応は必要になるかもしれない。

続いて「Apex Legends」をプレイ。筆者は普段、FPS(First-person shooter)ゲームをさほどプレイしないため、どの程度のFPS(フレームレート)が出ていれば快適なのかは判断が難しいところだが、射撃訓練場ではデフォルトの設定でも80~110fpsが出ていた。カクツキなども感じなかったので、十分快適に遊べると言ってもいいのではないかと思える。

Apex Legendsのグラフィック設定

最後に、6月6日に一般販売が開始された「Diablo IV」もプレイしてみた。ゲーム内のグラフィック設定はデフォルトから変えてはいないが、解像度1280×720ピクセル、クオリティプリセットは「高」。この状態で、40~70fps、平均で50fps前後という感じだった。もともと低FPSでもさほど問題はないゲームだが、もう少しFPSを上げたいという場合にはクオリティプリセットを「低」にすると平均で90fps程度になる。画質は当然犠牲になるが、7インチの画面であれば、「低」でもまったく問題はないと感じた。

コストパフォーマンス最高の1台

これまで、Steam DeckやONEXPLAYERなど、同じようなスタイルのゲーミングデバイスを利用したこともあるが、いずれも本体が意外と重く、長時間のプレイは腕が疲れてしまうことが多い。その点、ROG Allyは本体が608gと軽量なこともあり、プレイ中に疲れを感じることはなかった。その意味では、快適なプレイ感と言い切れる。

バッテリー持ちはプレイするゲームにもよるが、最もパフォーマンスの高いTurbo設定では60分ほどになる。外出先で重量級ゲームをプレイしようと思うのであれば、モバイルバッテリーを用意したほうがいいだろう。

とはいえ、最新のAAAタイトルもそれなりにプレイでき、かつ10万9800円という価格は、現行のゲーミングUMPCとしては群を抜いてコストパフォーマンスが高い。量販店での実機展示も行われているので、ぜひ手に取ってサイズ感やパフォーマンスをチェックしてみてほしい。

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