アップル製品は新技術の採用が遅れがち

アップルの「AI関連求人」が急増。iPhoneなど生成系AIで“変革”か

Image:Koshiro K/Shutterstock.com

先日、アップルがChatGPTほか外部のAIツール使用を社内で制限しているとの報道をお伝えしたばかりだ。かといって、同社は大ブームの生成系AIに背を向けているわけではなく、それどころかSiriを強化すべく独自の生成AI開発に取り組んでいるとのリーク情報もあった

それを裏付けるように、アップルが5月内だけで28件ものAI関連の職種を新設して募集し、「アップルのモバイルコンピューティングプラットフォームを変革する」ことを期待している、と述べていることが明らかとなった。

アップルは常に採用活動を行っており、AIの求人案件を出すことも珍しくはない。しかし、ここ数週間で求人ページでのAIに関する募集を急激に増やしており、最近(19日時点)で28件もの求人案件を追加し、その多くが生成系AIに言及しているのは注目に値するだろう。

タイトルに「AI」が含まれる求人情報は88件あり、そのうち3分の1以上が今月の新着だ。アップルも生成系AIブームを、座して観ていたわけではないらしい。

最近ティム・クックCEOも投資家との電話会談で、生成系AIにつき「確かに非常に興味深い」と認めていた。同時に「さまざまな場所で話題になっているように、整理しなければならない問題が数多くある」とも付け加え、準備不十分のままでは飛びつかないとも示唆している。アップル、特にクックCEO体制下では、新技術に対して非常に慎重であり、iPhoneの5G対応も2020年と最後発だった。

とはいえクック氏は、アップルがAIを「巨大なもの」と見ており、自社製品のために関連技術への投資を続けていくとして、前向きな姿勢で声明を締めくくっていた。同社は舞台裏で最新技術への莫大な投資を惜しまないが、製品が出るまでに長い期間がかかることは、噂のAR/VRヘッドセットに象徴されている。

今回の求人情報は多岐にわたっているが、最も目を惹くのはビジュアルジェネレーティブモデリングリサーチエンジニアの職種だ。そこでは「生成系AI技術がアップルのモバイルコンピューティングプラットフォームを変革する」と謳われている。つまり、iPhoneやiPadを生成系AIにより「変革」することを目指しているわけだ。

ほか、新たなAI/ML(機械学習)関連の求人には、AI NLPプロダクトエンジニアリングマネージャーやAI NLPコンテンツプロダクトエンジニア、機械学習(生成系AI)エンジニアなどが並んでいる。アップル社内で外部AIツールの使用を制限しているのは、その対価として機密情報や顧客のプライバシー情報が漏れるのを防ぐほか、独自のAI開発につき他社に知られることを警戒しているためかもしれない。

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