「大量生産しやすくエネルギー効率もいい」
米MIT、紙のように薄くどこにでも貼れるスピーカーを開発
米MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者らが、あらゆる場所に貼り付けて音を出せる、紙のように薄いスピーカーを開発したと発表した。このスピーカーは大量生産がたやすく、またエネルギー効率に優れて多くの電力を必要としない、とも主張されている。
スピーカーの原理は「電流と磁界により膜を振動させて空気に作用し、音波を作り出す」ことであり、これは小型の製品であっても変わりはない。近年のスマートフォンや薄型テレビ向けにはかさ張らない設計が追求されており、紙のように薄いスピーカーが搭載された前例もあった。
こうした薄型スピーカーには、クリスタルやセラミックなどの圧電物質(電圧を掛けると伸縮する)が使われたものがほとんどだ。が、この方式の欠点は何かの表面に取り付けることで振動する能力が低下し、音波を発生しにくくなることだ。
今回のプロジェクトは、そうした欠点を克服しようとするものだ。IEEE Transactions of Industrial Electronicsに掲載された研究論文によれば、膜の一部だけが振動するように設計されているという。そのために格子状に盛り上がったドームを形成し、それぞれを独立に振動させている(通常のスピーカーは全体が振動する)とのことだ。おかげで、何かの表面に貼り付けても振動が吸収されず、音を出せるというわけだ。
この偉業を実現するため、圧電材料の薄い層が2層のPETプラスチックで挟まれている。片方のプラスチックには格子状の小さな穴が開いており、その穴から間にある圧電材料が突き出ているかっこうだ。
そして下のPETプラスチック層が実装される面とのバリアとして機能し、紙のように薄いスピーカーが途切れることなく動作するしくみである。もちろん革新的な技術というわけではないが、逆にいえば既存の加工技術の延長上にもあり、大きなコストがかからないことも期待できる。
この技術が最終的に、どういった形で製品に実装されるのかは興味深いところだ。スマートフォン用のケースに貼って小型スピーカーとしたり、あるいは文字通り壁紙のように部屋の壁を覆い尽くせるのか、今後のさらなる進展を待ちたいところだ。