なぜSiriの改善が遅れているのかも解説
アップル、ChatGPTのようなAIを開発中との報道
OpenAIが最新の大規模言語モデル(LLM)「GPT-4」を発表したことで、AIをめぐる動きはますます加速している。この発表を受けて、アップルもいずれSiriに取って代わる可能性のある生成系AIをテスト中との噂が報じられている。
昨年末からのChatGPT人気、それをきっかけとした生成系AIへの関心の高まりが、アップルやMeta、アマゾンやテスラといった(AIでは先行していたはずの)ハイテク大手に技術開発の見直しを迫っているとの観測は、台湾DigiTimesも先週報じていた。
その意味で、今回のThe New York Times(NYT)の報道にも意外性はない。しかし興味深いのは、アップルやアマゾン、Googleがどのように「AI競争に敗れたか」という切り口だ。まずアップルに関しては、2011年にSiriがデビューを飾った頃から振り返られている。「バーチャルアシスタントは10年以上かけてなくてはならない存在になった」にもかかわらず、「不便な設計と誤算に阻まれ、チャットボットが台頭する余地を残してきた」というわけだ。
Siriの進歩が遅れている理由の一部は「技術的なハードル」と「不格好なコード」にあるという。2014年にSiriの改良を任されたJohn Burkey氏は、これにより「基本的な機能をアップデートするのに数週間かかった」と証言している。
Siriのデータベースには、音楽アーティストの名前やレストランなどの場所など、20数ヶ国語に及ぶ巨大な単語リストが登録されている。それが「一つの大きな雪だるま」になっており、そこに単語を追加したいと思ったとしても、「一つの大きな山になる」(ほど莫大な作業量)とのことだ。
実際の作業としては、データセットにいくつかの新たなフレーズを追加する場合、データベース全体を再構築する必要があり、それには「最大で6週間かかる可能性がある」という。また、新たな検索ツールなど複雑な機能を追加する場合は「1年近くかかることもある」そうだ。
ちなみに、OpenAIがGPT-3.5およびAIチャットボット「ChatGPT」を公開したのが昨年末で、それからGPT-4発表までは3ヶ月強だった。単純にこの期間でアップデートできたとは考えがたいが、それでもSiriはこのスピード感に追いつくべくもない。
またNYTの記事中では、先月アップルが従業員向けに開催したという社内AIサミットにも言及されている。ただし、その場では生成系AI技術の話はなく、ヘルスケアやプライバシーなどに限られていたと報じられていた。
今月初めにアップルは、ChatGPT搭載アプリの承認(メールアプリの更新)を拒否したことがあった。同社は年齢制限やコンテンツフィルタリングの追加が必要だとコメントしていたが、LLMは時として問題発言をすることもあり、それがSiriと統合する上でネックとなるかもしれない。
- Source: The New York Times
- via: MacRumors