一方で州内にEV関連工場が次々と建設される矛盾

道路インフラ維持のため“EV年会費”の3倍増が米テネシー州で検討されている

Image:Marian Weyo/Shutterstock.com

環境保護の必要が訴えられている現状では、電気自動車(EV)に補助金を出したり、自動車税の免除あるいは軽減措置が採られることも珍しくはない。そんななか、米テネシー州では毎年のEV登録費を3倍に引き上げることを検討していると報じられている。

テネシー州のビル・リー知事は再選後、交通インフラ法案の数百億ドルもの資金調達のため、道路関連の新ルールを検討しているという。その1つが、EV所有者が毎年支払っている使用料を100ドルから300ドルにすることだ。

その理由は、現在の道路予算は化石燃料車が支払うガソリン税により賄われているが、それが燃費の良い車やEVに乗り換える人が増えるにつれ、アテにならなくなるからだという。

つまり現状では、ガソリン税のほとんどが州内の高速道路や道路のメンテナンス費用に充てられているが、EV所有者はその税を支払っていないというロジックである。なお、リー氏はガソリン税の値上げはしないと主張しており、EV登録費の値上げはその穴埋めとなるようだ。

米AP通信によると、300ドルという額は最終的なものではなく、リー氏は記者会見で「誰にとっても公平な料金であることを確認したい。この数字を検討し、前進する」と述べたとのことだ。

リー氏は明らかにEVよりもガソリン車を優先しているようだが、一方で自動車メーカー各社はテネシー州にEV関連の工場を次々と建設している。たとえば9月にはフォード・モーターが同州の西部に56億ドル規模の生産施設の建設を始めており、EV版ピックアップトラックや同モデル向けバッテリーを生産する予定だ。

米国でEVに年間使用料が課されることは稀ではなく、少なくとも31州で徴収されているとのこと。その額はコロラド州の50ドルからワシントン州の225ドルまでと幅があるが、もし今回の法案が成立すれば、テネシー州が最も高額となる。

車のインフラに莫大な費用がかかることは忘れがちだが、ドライバー達が道路を安心して走れるのも、すべては道路が整備され、交通信号機が制御およびメンテナンスされているから。カナダの非営利メディアThe Discourseの分析によると、自動車通勤に1ドルかかるたびに、インフラや事故責任、騒音、大気汚染、渋滞などを含めて社会には9ドル以上もの負担が掛かっているとのことだ。

それらの費用は、化石燃料車を前提とした現代の税制度のもとでは、ドライバー自身によりガソリン税を通じて支払われてきた。だが、EVの普及率が高くなるにつれ、そのオーナーにも道路インフラの恩恵を被っていることに見合った負担の増加が求められていくのかもしれない。

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