道具は使い方次第
インディゲーム開発者、体験版や予告動画の公開をためらう。理由は「AIですぐに模倣ゲームが作られる」から

インディーズゲーム開発スタジオのAlliance Artsは、悪魔をテーマにしたロシアンルーレット式飲酒ゲーム『Drunken Goddess Reflux』の体験版の公開を延期した。このゲームは今週開催されているSteamのセールに合わせて準備されていたという。
延期の理由は「プレイ動画の投稿・配信に一定の制限を設けたうえで体験版の一般公開を予定していたが、現在の運営体制では適切な対応・管理が難しいと判断したこと」「体験版の公開内容をもとに、AI等を用いて本作の表現やゲーム内容を短期間で模倣・再現した作品が、本作の発売に先行して公開される可能性を懸念していること」を考慮した結果と説明されている。
Alliance Artsは、ベータ版の提供を延期するかわりとして、参加条件やプレイ動画の投稿・配信に関するルールを事前に確認・承諾したユーザーを対象に「クローズドな環境でのオンライン体験を実施する」としている。

このように、コンテンツの公開やアイデアの共有に慎重な姿勢を取っているのはAlliance Artsだけではない。
数々の賞を獲得したポイント&クリック式のアドベンチャーゲーム『Papers, Please』の開発者であるルーカス・ポープ氏は、今年4月のポッドキャスト番組中で、「AIに吸い取られたり、誰かに真似されたり、そういったことが起こる可能性があるため、開発中のことについてはあまり話すことはない。(最近は)自分が取り組んでいることについて話すことについて、以前ほど気楽にはなれなくなった」と述べた。
アイデアが「AIに吸い取られる」問題は、ここ数か月の間にインディー開発者の多くにとって、可能性があるという話だけではなくなりつつある。
たとえば今年3月、開発者のフレイヤ・ホルマー氏は、開発中の「中央の回転軸を軸にプレイする『テトリス』風ゲーム」の映像をSNSに公開して注目を集めた。ところがその数日後にはホルマー氏の作品が正式リリースする前に、このゲームのコンセプトを模倣したプレイ可能なコピー作品が多数リリースされる事態になってしまった。
ホルマー氏はBlueskyへの投稿で、「誰かがバイブコーディングして作った粗悪なクローン作品をオンラインで共有した」「AIだろうが何だろうが、あらゆる所に見境なく(アイデアを)パクる輩がいると、開発の進捗状況をシェアする気も失せるよね」と語った。
一方、ホルマー氏の作品のAI生成クローンをリリースしたひとりであるチャーリー・グリーンマン氏は、自分の行いについて悪びれるわけでもなく、何の問題もないと主張した。同氏は、指摘された作品は「全く新しい作品」だという。そして404Mediaの問い合わせに対し、「どの段階なら、ある曲が別の曲をコピーしていることになったり、あるゲームが別のゲームをコピーしていることになるのか?ブロック玩具やジェンガを作った人は、それがテトリスのパクリだと言われるのか?」と逆に質問し返した。
その論理が通るなら知的財産権という概念が成り立たない気がするが、そもそもAI界隈にはそれを軽視する風潮がある。
別の考え方を持つゲーム開発者もいる。Howltide Gamesのイヴァン・ラゴ氏は「賛否両論ある意見」と前置きしつつ「AIが一夜にしてだれかのゲームをコピーできるなら、それは本当のゲームではなかったということだ。魂もビジョンもなく、単一のメカニズムに基づいて作られた、手っ取り早く金儲けをするための作品だったに過ぎない。AIは実際のゲームをクローンしているわけではない。そもそもアセットフリップで作られたものを、安っぽい模倣品として作っているだけだ」とXで語っている。
もちろん、AIがすぐに誰かのアイデアをもとにそっくりな模倣ゲームを作れるとしても、それは(少なくとも今は)オリジナルとして開発されている作品の粗悪なコピー作品にしかならない。
ホルマー氏は、雨後の筍のごとくAI模倣ゲームが現れたときは「まあ、仕方ないか」と半ば諦めの心境にもなったが、「今でははるかに模倣作品は少なくなった」とし「逆に時間をかけて本当にきちんとしたもの、誇れるような良いものを作る余裕ができたと感じている」と述べている。
- Source: Alliance Arts(Steam) Freya Holmér(Bluesky)
- via: Ars Technica
- Coverage: 404 Media
