【連載】佐野正弘のITインサイト 第227回

ついに「ahamo」値上げに踏み切る理由。ドコモはユーザーへの影響を緩和できるか

佐野正弘

KDDI、ソフトバンクが既存プランも含めたモバイル通信料金の値上げを打ち出す中、唯一既存プランの値上げに踏み込んでいなかったNTTドコモ。競合が既存プラン値上げの効果で好業績を打ち出す中、NTTドコモは業績の伸び悩みに苦しんでいただけに、同社がいつ値上げに踏み切るのか大きな関心を呼んでいた。

そのNTTドコモが動きを見せたのは2026年9月25日。同社は記者説明会を開き、料金に関する4つの施策を打ち出した。そのうち1つは大容量プラン「ドコモ MAX」の60歳以上の契約促進に向けた「ドコモ MAX 60歳以上割」の提供だが、それ以外はおおむね値上げ、あるいは実質値上げというべき内容だ。

NTTドコモは2026年9月25日、料金に関する説明会を実施。「ドコモ MAX」など一部を除いて、大半のプランで何らかの形での値上げがなされるようだ

1つは、冒頭でも触れた既存料金プランの値上げである。2026年12月1日から、新規契約の受付を終了したプランを中心に料金改定を実施するとしており、「eximo」「5Gギガホプレミア」など、大容量通信に対応した高額なプランはおおむね550円、「irumo」「5Gギガライト」など小容量のプランは110円から330円の値上げとなるようだ。

新規契約終了した既存プランを中心に値上げを実施。大容量プランは月額550円、小容量プランでは月額110円から330円の値上げがなされるという

NTTドコモが値上げする理由は、おおむね競合他社と変わらない。さまざまな物価や人件費が上昇する一方、データ通信量は増加の一途をたどっており、快適な通信の維持にはより多くの投資が必要になる。

加えて今後は、AIの利用増加による更なる通信トラフィックの増加や、セキュリティ対策、それらに応えるための次世代通信規格「6G」への移行などにも大きなコストがかかる。そうしたことから同社としても、既存プランの値上げに踏み込む必要があったようだ。

値上げの理由は物価や人件費の上昇、そしてAIや6Gなどに向けた投資が理由となっており、競合と大きな違いはないようだ

ただし「ドコモ MAX」は、提供して1年目の主力プランということもあり、料金の値上げはなされていない。だが他の既存プランには大きなメスが入れられており、1つはオンライン専用プランの「ahamo」である。

ahamoも2026年12月1日に内容をリニューアルするとしており、割引なしでシンプルに大容量を利用できる料金プランというahamoのコンセプトは維持しながらも、月額2,970円(以下、税込表記)で30GBのデータ通信量が利用できるという仕組みは大きく変更。利用した通信量に応じて料金が変化する段階制のプランとなる。

具体的には、40GBまでで月額3135円、60GBまでで月額4125円、そして120GBまでで月額5115円という、3段階の段階制プランとなる。ただしデータ通信量は毎月の上限を設定できることから、例えば40GBを超えても自動的に料金が上がらないようにすることは可能だという。

ahamoは段階制のプランにリニューアル。従来の内容と比べ全体的に10GB増量され、165円の値上げがなされている

この料金を従来のahamoと比べた場合、先にも触れたように2,970円で通信量30GBであったことから、最も安い40GBの場合と比べると、10GB増量され165円の値上げされたことになる。

また120GBまで利用した場合の料金は、月額4950円で80GBの通信量を追加できる「大盛りオプション」を追加した「ahamo大盛り」の料金と比較すると、やはり10GBの通信量が増量され、165円の値上げとなる。

料金が値上げされていることは間違いないものの、上げ幅は小幅であるし、10GB分の通信量増量もなされているので一定のメリットもある。同社の代表取締役副社長コンシューマサービス本部長の齋藤武氏によると、リニューアルの内容には、2026年8月から実施している「データ増量おためしキャンペーン」(2026年11月30日終了予定)の結果が影響しているという。

このキャンペーンは、ahamoの月額料金は2,970円を維持したまま、通信量を増量して40GBのデータ通信量が利用できるようになるもの。同社が実施したアンケート調査では、データ量が増加されたことで満足度が向上し、今後も利用を継続したいと答えたという。そこで通信量の増量がahamoの満足度に繋がると判断し、今回の判断に至ったようだ。

通信量を10GB増量する「データ増量おためしキャンペーン」のアンケート結果で、増量に高い満足度が得られたことを受け、今回のリニューアルへと至ったようだ

ahamoは、サブブランドを持たないNTTドコモにとって、顧客獲得の武器となる主力プランの1つだ。それだけに可能な限り競争力を落とさないよう、可能な限り値上げ幅も小幅に留めたのではないだろうか。

一方で、大幅値上げと言わざるを得ないのが小容量プランの「ドコモ mini」である。ドコモ miniも2026年12月1日より大きく変更されるが、現在のドコモ miniの新規受付を終了し、別途新たなプランとして「ドコモ mini2」が提供される。

このドコモmini2も、ahamo同様段階制の料金プランを新たに採用しており、データ通信量6GBまでで月額3,278円、12GBまでで月額4,598円となる。

既存のドコモ miniは、データ通信量4GBで月額2,750円と、データ通信量10GBで月額3,850円の2プラン構成となるので、比較すると通信量は2GB増えているが、月額料金は528円から748円の値上げとなることが分かる。

小容量帯は「ドコモ mini」に代わって新たに「ドコモ mini2」を提供。こちらも段階制のプランとなるが、実質的な料金はドコモ miniと比べ税込みで500円から700円超の値上げとなっている

競合でも小容量のプランほど新プランの値上げ幅が大きく、500円前後値上げするケースはあった。だが、税込みとはいえ800円近くの値上げというのは、筆者が記憶する限り前例がない大きなものだ。その理由として齋藤武氏は、ドコモ miniの利用者に関して「家族で使いたい、家族通話を楽しみたいニーズがあった」と話している。

記者説明会に登壇するNTTドコモの齋藤氏

ドコモ miniは、単身者でも割引が受けやすい競合サブブランドに対抗する狙いが強いプランで、固定ブロードバンドや電気、クレジットカードなどとのセットによる割引に重きが置かれていた。だがそのユーザーからは、家族割引施策の対象外となることに不満を抱く声が多く挙がっていたことから、ドコモ mini2では家族契約によるメリットを充実させることに重きを置いたのだという。

実際ドコモ mini2では、ドコモ miniにはなかった「みんなドコモ割」が新たに追加され、「ファミリー割引」のグループ契約が2回線以上あれば月額550円の割引が受けられる仕組みが加わる。他の割引も全て適用すれば、6GBまでで月額858円、12GBまでで月額2,128円と、小幅の値上げあるいは値下げとなる。

それに加えてファミリー割引を申し込んでいる人は家族間の通話が無料になるほか、国内通話かけ放題の「かけ放題オプション」(月額1,800円)が月額900円で利用できる割引施策も提供されるという。そうしたことからドコモ mini2は、家族契約を前提のプランとして家族契約ユーザーの離脱を防ぐことに重きを置くことで、大幅値上げの影響を緩和しようとしていることが分かる。

ドコモ miniの契約者からは、家族割の対象とならないことで家族契約のメリットがないことに不満を抱く声が多くあったようだ

NTTドコモは、依然としてネットワークに対する不満を根強く抱えている。それでもなお現在のタイミングで値上げに踏み切ったのには、以前よりユーザーの不満が落ち着き、値上げが受け入れられる素地が整ったと判断してのことなのだろう。

齋藤氏はネットワークの強化は「道半ば」と話し、ネットワークの改善が今回の判断につながった訳ではない様子を示すが、その一方で顧客基盤の強化は進んでおり、以前より競争力は高まっているとも話していた。

ただ、それがユーザーの評価にどこまで結び付くかは、提供してみないと分からない部分も多いのも確かである。とりわけ中容量プランのベンチマークとされてきたahamoの内容が大きく変わったことで、競合がどのような動きを見せるかも気になるところだ。

NTTドコモの値上げが本格化する2026年末に向け、NTTドコモの評価がどう変化し、それを受けて競合がどう動くのかという点は、業界全体の今後の行方を占う上でも重要になってくるだろう。今後各社の料金施策を巡り、見逃せない動向が続くことになりそうだ。

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