中国製採用なら輸出管理規制に抵触も?

アップルに米商務長官が苦言。中国製メモリ採用「支持しない」

多根清史

Image:Thrive Studios ID/Shutterstock.com

AIデータセンター需要を背景にメモリの不足・高騰が続くなか、アップルは中国CXMT製メモリの自社製品への搭載に向け、iPhoneやMacBookでのテストを進めていると噂されている 。そんななか、米商務長官のハワード・ラトニック氏は、「トランプ政権はそれを支持していない」と語った。

ここ数か月、アップルはトランプ政権に対し、中国企業であるCXMTとYMTCの2社からのメモリチップ調達の許可を求めているとされてきた。これに対し、米国の超党派の上院議員らは8月21日までに上記2社からメモリチップを調達しないことを確約するよう求めていると報じられている。

その背景には、両社ともに中国軍との関係が米政府機関から懸念されているという事情がある。YMTCは米商務省のエンティティ・リスト(米国の輸出許可が必要な企業リスト)に掲載されている。また米国防総省はYMTCとCXMTの両社を「中国の軍事企業」としてブラックリストに掲載している。

さらに、アップルは通常、自社製品のために特注の部品を必要とすることも問題点として挙げられる。もしアップルがiPhone向けにカスタマイズしたメモリチップを調達しようとするのであれば、CXMTやYMTCに対し製品情報を共有する必要が生じる可能性が高いが、それは現在、米国の輸出管理規制によって制限されており、商務省の許可を得る必要が生じると考えられる。

この点について、アップルのサビ・カーンCOO(最高執行責任者)は、メモリに関しては「カスタマイズの度合いはそれほど高くはない」と述べており、中国製の市販メモリチップをそのまま使う可能性を示唆している。もっとも、その主な用途は中国向け製品になるとみられる。

アップルは、メモリの調達先を中国企業にまで広げる意向をほとんど隠していない。ティム・クックCEOは最近の決算説明会で「あらゆる選択肢を評価している」と述べていた。さらにWSJの取材でも、中国企業からメモリやストレージを調達する際の制限を緩和すべきかと問われ、「すべての供給先を検討すべきだと考えている」と答えている。

一方、ラトニック氏は今回、「メモリ問題には別の解決策があるはずだ。しかし、優れた米国企業が中国製メモリを使うのは好ましくない」とも述べている。あくまでマイクロンなどの米国企業や、韓国サムスンなど同盟国企業のメモリを使うべきだと示唆しているようだ。

この発言は、ラトニック氏がクックCEOとともに、テキサス州ヒューストンにあるAdvanced Manufacturing Centerを訪問した翌日に出たものだ。同施設は、アップルによる米国内製造への6000億ドルの投資の一環であり、米国の企業や学生に先進的な製造技術を実地で教える無償の人材育成・研修拠点となる。

もちろん、トランプ政権との良好な関係を維持し、その見返りとして有利な条件を確保するための取り組みでもあるだろう。しかし、中国からのメモリチップ調達については、そうした取り組みも功を奏さない可能性がありそうだ。

消費者の立場も含めてこれらの問題を考えたとき、中国製と米国製、どちらの部品を使うのが最良の選択かは判断が難しい。米国政府の意向を汲むためにアップルが国内メーカー製メモリを無理して使うことになれば、そのしわ寄せはユーザーに来るだろう。

もっとも、中国製のメモリであれば価格が引き下げられるわけではなく、サムスン製よりも高価だという報道もある。このことから、中国向け製品のメモリを確保するためという狙いも考えられ、今後のアップルの舵取りが注目される。

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