それはそれとしてiOSのChatGPT統合は続行

アップル、OpenAIを提訴。「営業秘密を盗みAIハードを開発」と非難

多根清史

Image:Ascannio/Shutterstock.com

アップルは、「AIハードウェアデバイス」の開発を進める過程で、OpenAIが同社の営業秘密および知的財産を盗用したとして提訴した。米カリフォルニア州北部地区連邦地裁に提出した訴状では、数か月にわたる機密情報窃取の計画を裏付ける証拠を発見したと主張している。

訴状によると、元アップルのハードウェア部門幹部で、現在はOpenAIのハードウェア部門責任者を務めるTang Tan氏や、元電気エンジニアのChang Liu氏が、アップルからの転職希望者に対し、未発表デバイスや部品、製造工程、サプライヤーとの関係に関する情報を提供するよう指示していたという。

Tan氏は、アップルの退職手続きに関する内部文書(「Need to Know」マーク付きの管理職向け資料)を保持・共有し、それをOpenAI側の新規採用者へ渡すことで、退職時のセキュリティチェックを回避する方法を指南していたとされる。

実際、アップルの調査では、Tan氏を含むOpenAIへ転職する従業員に、セキュリティチェックを回避しようとする傾向が確認されたという。具体的には、退職時に機密情報を自分宛てへメール送信するという共通パターンが見つかったとしている。

さらに、ある従業員の業務用デバイスに残された証拠から、Tan氏が面接時に「いくつか部品を持ってきて」と指示していたことも確認されたという。バッテリーやSiP(System in Package)、ロジックボードなどのハードウェアをOpenAI側へ見せるよう促していたことを示唆している。アップルは、これは一度きりではなく、複数のOpenAI面接対象者が同様の要求を受けていたと主張している。

一方、Liu氏は退職後もアップル支給のノートPCを保持し、OpenAIで勤務中に脆弱性を悪用して数十件に及ぶアップルの機密文書をダウンロードしたとされる。また、アップル社員のYu-Ting “Alyssa” Peng氏との関係を維持し、アップルのプロジェクトやサプライヤー選定、エンジニアリングに関する情報提供を受け続けていたという。

Liu氏は、自身がまだアップルの社内システムへアクセスできることを知ると、Peng氏へ「LOL(英語圏のネットスラングで『大笑い』の意味)、まだネットワークストレージにアクセスできると分かった。面白すぎる」とメッセージを送っていたとされる。

さらにOpenAIは、それらの機密情報を利用してアップルのサプライヤーに接触していたという。ある企業に対しては「アップルから許可を得ている」と偽り、「特定の営業秘密である金属仕上げ技術」をOpenAIデバイス向けに使用させたとしている。

アップルは、OpenAIの経営陣がハードウェア情報の窃取を容認する企業文化を築いており、そのハードウェア事業は「根本から腐敗している」と非難している。

その理由として、自社から盗まれた情報への依存を挙げている。訴状では、OpenAI社内では「こうした不正行為が常態化し、経営陣自らがそれを体現している」としたうえで、「技術スタッフから最高ハードウェア責任者、さらにはビジネスパートナーとの連携に至るまで、OpenAIはあらゆるレベルでアップルの営業秘密および機密情報を盗み続けてきた」と主張している。

アップルは、情報流出の可能性を初めて把握した今年2月にOpenAIへ連絡を試みたものの、回答が得られなかったため、さらに調査を進めたとしている。加えて、OpenAIはハードウェア製品の早期投入を迫られており、その結果、正当な開発への投資ではなく近道を選んだと主張している。「OpenAIはアップルが数十年かけて築いたイノベーションにただ乗りするため、営業秘密の不正流用に手を染めた」と訴えている。

元アップルのデザイン責任者で、現在はOpenAIのハードウェアデザインを担当するジョニー・アイブ氏は、訴訟の被告には含まれていない。ただし、OpenAIが買収したio Productsは訴訟対象となっている。また、OpenAIのサム・アルトマンCEOにも言及はあるものの、被告には含まれておらず、アップルもアイブ氏やアルトマン氏が今回の件に関与したとは主張していない。

また、訴状ではSiriへのChatGPT統合に関するOpenAIとの提携にも言及しているが、この契約自体は今回の訴訟とは無関係だと説明している。

興味深いのは、アップルがOpenAIによる自社人材の引き抜き自体を問題視している様子はないことだ。訴状では、現在400人以上の元アップル社員がOpenAIで働いていることにも触れられている。

これまでの報道では、アップルとOpenAIの関係は悪化しつつあるとされる。OpenAIは、ChatGPT統合がサブスクリプション収益の増加に十分つながっていないことや、契約条件への不満から、アップルへの提訴を検討しているとも報じられている。

今回の訴訟で、アップルはOpenAIに対し、自社技術の保有・利用・開示を差し止める差止命令に加え、「裁判で決定される額」の損害賠償を求めている。また、Tan氏とLiu氏については、アップルとの契約に違反したとしても提訴している。

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