いまあるPCとスマホ、2030年まで大事に使いましょう
メモリ不足は2030年まで続く? 大手DRAMメーカー会長が示す「深刻な見通し」

生成AIモデルの強化学習には膨大な数のGPUと、その作業領域となる大容量の高帯域幅メモリ(HBM)が必要になる。そして、度を超したブームとなっている現在のAI需要を満たすため、昨年あたりから世界各地でAIデータセンターの建設ラッシュが起こっている。
結果、煽りを受けているのが個人向けの電子機器分野だ。あらゆる半導体製品にはメモリが必要だが、DRAMメーカーの中には利益率の高いAI向けのメモリを増産するために一般製品向けのメモリ生産を打ち切るところまで出ており、PCからゲーム機、スマートフォンといったIT機器は値上げの圧力に晒されている。
こうした状況に、業界アナリストらは新たな半導体工場が稼働し始める2028年ごろまでは、現在の状況が大きく改善されることはないとの見通しを示している。
ところが、韓国の半導体メーカーSKハイニックスの会長チェ・テウォン氏は、メモリ不足はあと2年では収まらず、4~5年は続く可能性が高いとの見解を示した。同氏によると、すでに業界はチップの基盤となるウェハーの不足に直面しており、今後その不足率は20%にまでのぼるという。そしてウェハーの増産には少なくとも4年から5年は必要であり、メモリを含む半導体の不足は2030年頃まで続くのだと、われわれ消費者の目の前が暗くなるような予測を述べた。
ここ最近も、メモリ不足の深刻度は深まるばかりで、ValveのSteam Machineや、 NVIDIAのゲーミング向け新型グラフィックカードであるRTX 60シリーズも発売時期が遅延している状況だ。BTO方式のPCメーカーのなかには、RAMモジュールについてユーザー持ち込み方式を採用するところまで出てきた。
ある調査会社は、部品コストの上昇が需要と生産を圧迫するため、2026年はスマートフォンとPC両方の出荷台数が約10%減少するとの予測を示した。
最新の報道を見ても、予測は深刻度を増すばかりだ。台湾のメモリコントローラおよびNANDフラッシュベンダーであるPhisonのCEOケインセン・プア氏は、AIプログラムをローカルハードウェア上で実行する方向へ移行する動きが高まることにより、メモリ供給不足が数年間、場合によっては10年にも及ぶ可能性があると予測している。
これは、PC上で実行できるオープンソースの自律型AIエージェントであるOpenClawへの関心の高まりを指しての予測と考えられる。OpenClawを動かすにはMac miniが最適だとされているが、世代は古いもののMac miniより大容量のRAMを搭載可能なMac Studioのほうが、OpenClaw需要によって品薄になっているとの報道も出ている。
Mac製品が採用するユニファイドメモリは広帯域で、Mシリーズチップに統合されたGPUから直接アクセスできるため、AIにとって効率が良い。世代は古いもののM3 Ultraチップを搭載するMac Studioなら、オプション選択でメモリ容量を最大256GBにまで増やすことができる(以前は512GBのオプションもあった)。この点が、OpenClawユーザーに注目されているとのことだ。
また、プア氏はこのOpenClawが特に中国で人気急上昇中であることが、メモリ業界が向こう数年間にわたって需要に追いつくのに苦労する理由のひとつになるとしている。中国ではOpenClawを動かすために、ARC統合グラフィックスを持つCore Ultra Series 3チップ(コードネーム:Panther Lake)搭載のノートPCが売れているとのことだ。
プア氏は今後のPC市場については、「2年後には、PCでAI推論を実行できるようになるだろう。OpenClawのようなものかもしれない」とし、そのためには現在主流の16GB RAMや512GBストレージを遙かに超える容量のメモリとストレージが必要になるとした。
ただし、AIデータセンターがメモリを大量に消費し続けるため、PCへのメモリ供給の逼迫はさらに高まるものの、メーカーは短期的にRAMやメモリ容量を削減したモデルを発売する傾向になるとしている。そして、NVIDIAがデータセンター向けに新しい「Vera Rubin」チップの出荷を開始すれば、さらにPC向けのメモリ不足が悪化するとも述べた。この傾向はスマートフォンなどでも同様になるとされている。
