【連載】佐野正弘のITインサイト 第198回

新機種で強靭さとデザイン強化、京セラはなぜ「TORQUE」を継続できるのか

佐野正弘

スマートフォンではコンシューマー市場から撤退し、現在は法人向けに特化している京セラ。だがKDDIから販売されている、京セラスマートフォンの象徴というべき高耐久モデル「TORQUE」シリーズは、撤退後も新機種が投入されている。

そして2026年2月5日には、そのTORQUEシリーズの最新モデル「TORQUE G07」が、KDDIの「au」ブランドから2026年3月18日に発売されることが発表されている。これはその名称通り、日本で発売されたTORQUEシリーズの7代目に当たるモデルだ。

KDDIから販売されている京セラ製の高耐久スマートフォン「TORQUE」シリーズ。2026年3月18日には、その新機種となる「TORQUE G07」が発売予定だ

TORQUEシリーズは高耐久性を求めるアウトドアユーザーから高い支持を得ているが、初代「TORQUE G01」が発売された2014年から既に10年以上が経過している。それだけにTORQUEシリーズにも新規性が求められていることから、TORQUE G07の開発に当たっては、次の10年に向けた「TORQUE 2.0」というコンセプトを打ち出して開発が進められたという。

では実際、どのような点に力を入れて開発がなされたのか。1つはTORQUEシリーズの根幹というべき高耐久性能のさらなる強化だ。TORQUEシリーズは前機種の「TORQUE G06」まで、試験項目を徐々に増やして耐久性能を徐々に高めてきたという。だが、TORQUE G07ではその試験項目を、TORQUE G06の29項目から37項目へと一気に拡大した。

結果、新たに泥水耐性を備えたのに加え、耐落下性能も2.0mから2.2mに強化。耐海水性能に至っては水深2.0mから5.0mへと、大幅な強化がなされている。他の追随を許さない圧倒的な高耐久性能を実現し、TORQUEシリーズのポジションをより確固なものにしたい考えなのだろう。

TORQUE G07は高耐久性能がより一層強化され、新たに泥水に耐える性能も備えている

2つ目の注力ポイントはデザインである。TORQUEシリーズは高い耐久性能を備えながらも、背面のカバーを交換してデザインをカスタマイズできる特徴を備えている。それでも従来、カラーバリエーションの少なさに不満を示す声が少なからずあったという。

そこでTORQUE G07ではユーザーの声に応えるべく、デザイン面に工夫を凝らしている。具体的にはベースとなる本体そのものは黒1色ながら、背面のカバーと正面の上下部分のカバーを交換し、本体カラーを変更できるようになった。カバーは別売りで最大5種類用意されており、セット購入も可能だという。

ベースのボディは黒ながら、背面カバーに加え前面の上下のパーツを交換することで、本体カラーを大幅に変えられるようになっている

また、背面カバーに備わっているNFCタグや、別売りの専用のNFCタグに本体をかざすことで、設定を一括で切り替えたり、アプリを起動したりできる「タッチプラス」機能を新たに用意。日常利用時とアウトドア利用時とで、着せ替えをして気分を切り替えたい時などに活用すると便利だ。

専用のNFCタグを読み取って本体の設定変更やアプリの起動などができる「タッチプラス」機能を新たに搭載。カバーの裏側にもNFCタグが備わっているため、それを読み取ってカバー交換前に壁紙のカラーを変えることなども可能だ

3つ目の注力ポイントは「au Starlink Direct」である。衛星とスマートフォンを直接つないでデータ通信ができるau Starlink Directは、アウトドアユースに強いTORQUEシリーズとは非常に相性が良いだけに、TORQUE G07は単にau Starlink Directでより通信がしやすい仕組みを備えている。

実際TORQUE G07は、au Starlink Directでも用いる4Gのアンテナ2つのうち、上部の1つを衛星通信で利用しやすいよう上向きに設計。さらに2つのアンテナのうち、受信レベルの高いアンテナを自動的に選ぶ「ASDiv」(Antenna Switching Diversity)という技術を導入することで、衛星との通信を維持しやすくしているという。

「au Starlink Direct」で衛星との通信を維持しやすいよう、4Gのアンテナの1つを上部に向け、さらに電波の受信レベルがより高いアンテナを自動選択する仕組みも導入しているとのこと

加えてTORQUE G07は、コンシューマー向けのニーズが大きいカメラ機能の向上もなされており、広角、超広角、マクロの3眼カメラを搭載。メインカメラには約5000万画素で1/1.55インチと、より大型のイメージセンサーを採用して暗所での撮影により強くなったほか、AI技術を活用して自動で影を消したり、被写体がフレームインすると自動で撮影を開始したりする機能なども備えている。

人などがフレームインすると自動で動画撮影を開始する「フレームイン録画」など、AI技術を活用したカメラ機能を複数備えている

一方で、チップセットは米クアルコム製のミドルハイクラス向けとなる「Snapdragon 7 Gen 4」、RAMは8GB、ストレージは128GBと、性能は控えめだ。ただ4585mAhのバッテリーは着脱が可能であるなど、TORQUEシリーズでニーズの高い要素はしっかり継続しているし、一連の強化を施したことで高耐久スマートフォンとして唯一無二の存在に仕上がっていることは間違いない。

ただ気になるのが、強化ポイントの多くがアウトドアを楽しむコンシューマー層に向けたものだということ。そもそも、コンシューマー向けスマートフォンから撤退した京セラがTORQUEシリーズの開発を継続できているのは、コンシューマー向けだけでなく、高耐久のニーズが大きい法人需要を獲得しているからでもある。

TORQUEシリーズは法人でもニーズが大きいことから、法人向けのTORQUE G07ではカメラを用いたバーコードの読み取りなどにも対応している

だが、法人向けスマートフォンで求められるのは頑丈で安心して使えること、そして安さだ。それゆえ着せ替えなどの仕組みは、法人向け端末では不要な要素でしかないし、TORQUEシリーズのニーズが大きい物流・建設などの現場では、5.0mの耐海水性能などもオーバースペックだろう。

法人需要を重視するならば、必要最小限の機能・性能以外は徹底して省き、価格を重視した端末となるのが自然だ。実際、京セラがコンシューマー向けから撤退して以降、法人向けに提供しているスマートフォンは、TORQUEほどではないが高耐久性能を備えつつも、非常に簡素なデザインのものが多い。

京セラが2026年2月10日に発表した法人向けスマートフォンの新機種「DIGNO SX5 KC-S306」。高い耐久性能をはじめ企業が安心して利用できる機能を豊富に備える一方、カメラは1つでデザインも昔のスマートフォンという印象だ

にもかかわらず、なぜTORQUE G07だけは、法人向けを重視しながらもコンシューマー向けを意識した内容に仕上げられるのかといえば、最大の理由は固定ファンの存在にある。TORQUEシリーズはずば抜けた高耐久性でアウトドア愛好家などから非常に強い支持を獲得しており、それは他のスマートフォンでは替えが利かない価値でもある。

それだけにTORQUEシリーズがどうしても欲しい、継続して買い替えたいという、固定客というべき顧客が存在していることが、ビジネス面でも大きな強みだ。ユーザーの期待を裏切らない限り、確実に売れ続ける稀有なモデルでもあることから、京セラもKDDIもそうした人達のニーズにしっかり応えることに力を入れているのだろう。

高耐久という部分で共通しているとはいえ、コンシューマーと法人のニーズには大きな隔たりがある。だが、両者の声を製品に反映していかなければ顧客も離れてしまう。それだけに、いかにバランスを取って相反するニーズに応え続けることが、今後もTORQUEシリーズが継続する上では非常に重要になってくるといえそうだ。

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