【連載】佐野正弘のITインサイト 第196回

ついに“業績下方修正”のNTTドコモ。競争激化と通信品質低下、失った信頼を回復できるか

佐野正弘

2025年7〜9月期の決算で、携帯大手3社の中で唯一減収減益となり “独り負け” の状況に陥っていたNTTドコモ。2026年2月5日に発表された2025年10〜11月期の決算でもその状況は変わっておらず、ついに業績の下方修正を打ち出す事態となった。

実際NTTドコモは2025年度の営業利益を当初予想の9660億円から、830億円引き下げ8830億円の予想になるとしている。子会社化した住信SBIネット銀行の影響や、アセット売却などによる収支改善によって600億円の増益要因があるにもかかわらず、主力の携帯電話事業の不振で競争力回復のための費用が重しとなり、利益を大幅に押し下げたようだ。

NTTドコモは2026年2月5日に、2025年度業績の下方修正を発表。営業利益を当初より830億円引き下げ、大幅な減益予想となるようだ(Image:NTTドコモ)

同日に実施されたNTTの決算説明会で、NTTドコモの代表取締役社長である前田義晃氏が説明した内容によると、業績下方修正に至った大きな要因の1つは携帯電話会社同士の競争が依然激化しているためだという。

競合のKDDIやソフトバンクらは前期の決算で、ポイント還元などを目当てとした短期解約目当ての顧客獲得にコストをかけるよりも、既存顧客により多くのサービスを利用してもらうことに重きを置くよう、戦略転換を図るとしていた。だが前田氏は「競争が落ち着いているという認識はない」と、競合の攻勢は依然厳しく競争激化が収まっていない様子を示していた。

2026年2月5日のNTT決算説明会に登壇するNTTドコモの前田氏は、競合との競争は依然落ち着いておらず、激化が続いていると説明する

競争環境の厳しさを示しているのが、端末購入プログラム「いつでもカエドキプログラム」の影響で300億円の減益影響が生じていることだ。これはスマートフォンを長期間の分割払いで購入し、2年後など一定期間後に返却することで、残りの期間の支払いが不要、あるいは安くなる仕組みだ。

なぜその端末購入プログラムで業績が悪化するのか。前田氏の説明によると、競争激化で顧客の流動性が高まったことにより、このプログラムを使いスマートフォンを返却する人が、NTTドコモが想定した以上に増えたという。その結果、将来発生する支出に備えて積み立てる引当金を計画より増やす必要が生じ、減益へとつながったようだ。

NTTドコモの業績見直し増減要因。販売促進費用の強化だけでなく、競争激化で端末購入プログラムでの返却が想定以上に増加し、収益が悪化したことも業績の下方修正には大きく影響したようだ(Image:NTTドコモ)

厳しい競争が収まっていない理由は、競合の動きから見て取ることができる。KDDIの代表取締役社長である松田浩路氏は、2026年2月6日の業績説明会で「販促費はYOY(対前年同期比)でフラットであり、過剰ではない」と説明。新規顧客獲得にかけるコストを増やしてはいないものの、減らしてもいないことが分かる。

KDDIの松田氏は2026年2月6日の業績説明会で、販売促進にかけるコストは増やしてはいないものの、減らしてもいないと説明していた

またソフトバンクの代表取締役社長執行役員兼CEOである宮川潤一氏も、2026年2月9日の決算説明会で、足元の競争環境について「あまり変わらない」と話す。同社は2025年10〜12月期で、スマートフォン純増数が10万件の純減を記録しているが、これは短期解約者を減らすための工夫をした結果だそうで、優良顧客の獲得にかけるコストは大きく減らしていない様子だ。

ソフトバンクは2025年10〜12月期でスマートフォン純増数が10万件の純減となったが、これは短期解約者の契約を防ぐ施策に力を入れたためのようだ

これまで販売施策が競合より弱かったNTTドコモが、顧客を減らさないよう販売強化を図っている。競合もそれに対抗するべく、従来と変わらない規模で販売促進にお金をかけており、こう着状態が続いているというのが実情だ。それだけにNTTドコモは競合を上回る規模の販売強化が求められ、かけるコストも一段と高まっている。

もう1つ、下方修正に影響した要因はネットワークの問題である。2023年に著しく通信品質を低下させて以降、NTTドコモはさまざまな通信品質対策を実施しているが、それでもネットワークに対する評価は回復しているとは言い難い。

最近、その理由を可視化する1つの指標が示されている。それは、総務省が2026年1月13日に公表した「令和7年度携帯電話及び全国BWA等に係る電波の利用状況調査の調査結果の概要」である。

その内容を見ると、NTTドコモの5G基地局数が5万2532局であるのに対し、KDDIは11万37局、ソフトバンクは10万4441局と、倍近い5G基地局をすでに設置している。とりわけ3.5GHz以下の低い周波数帯の5G基地局は、NTTドコモの出遅れが目立つ。

総務省「令和7年度携帯電話及び全国BWA等に係る電波の利用状況調査の調査結果(概要)」より。携帯各社の5G基地局数を見ると、NTTドコモの基地局数はKDDIやソフトバンクの半分程度であることが分かる(Image:総務省)

5G向けに割り当てられた3.7GHz以上の周波数の電波は遠くに飛びにくく、エリアの端で通信品質が低下しやすいことから、低い周波数でそれをカバーすることで5Gの通信品質を高めやすくなる。だが、NTTドコモは高い周波数帯で広いエリアをカバーする方針を取り、低い周波数帯を5Gに活用することには長らく消極的だった。そのことが5G基地局数の違い、そして通信品質の差として明確に出てきたといえよう。

基地局数の差は、5G単独で運用できるスタンドアローン(SA)運用への移行にも影響を及ぼしている。先の総務省の資料によると、5G SAに対応した基地局数はNTTドコモが1万4248局であるのに対し、KDDIが4万627局、ソフトバンクが9万9871局と、やはり大きな差がつけられている。

同じく総務省「令和7年度携帯電話及び全国BWA等に係る電波の利用状況調査の調査結果(概要)」より。SA運用の5Gの基地局数に関しても、NTTドコモがKDDIやソフトバンクに大きく後れを取っているようだ(Image:総務省)

現在主流のノンスタンドアローン(NSA)運用の5Gは、4Gと一体で運用する必要があるため、4Gに負荷がかかりやすく、それがNTTドコモの通信品質低下の一因と指摘されることも多い。それだけに最近では、4Gへの負担を減らすべく、SA運用への移行を進める動きが強まっているのだが、そのSA運用への移行が競合より遅れていることが、一層NTTドコモの通信品質回復を遅らせる要因にもつながっている。

それだけにNTTドコモは、通信品質改善のため出遅れを取り戻す姿勢を一層強化しており、そのために多額のコストを費やしていることも、業績の下方修正には大きく影響している。

実際、NTTドコモは2025年度の下半期に、2025年度上半期に設置した数の3倍に上る5G基地局を設置するとしている。2026年度上半期・下半期も同様に、2026年度上半期の3倍規模のペースで5G基地局を増やしていく計画だという。

基地局数の設置は2025年度下半期から2026年度下半期まで、2025年度上半期の3倍ペースで5G基地局の設置を進めていくという

また5G SAへの移行に関して、前田氏は「5Gを始めた頃の基地局でSAに対応していないものがあり、そこを交換しながらネットワークの土台を整えていきつつ、SAの環境を便利で使いやすい所に積極的に持っていきたい」と説明。2026年度には移行を積極化していく姿勢のようだ。

もちろん一連の投資は成果を挙げているようで、番号ポータビリティでは4か月連続で転入が続いているほか、「ドコモ MAX」の契約数が250万を超えるなど、高額なプランの契約増加により月間のARPU(ユーザー1人当たりの平均売上高)も、前年同期比で50円増加している。また通信品質の面でも、主要都市の中心部のおよそ90%で、ダウンロードの速度が100Mbpsを超えるなど、着実に改善が進んでいるようだ。

業績悪化をいとわない積極投資で、今後顧客基盤の回復と通信品質の改善は進むと考えられるが、多額の投資をいつまでも続けていれば業績が一層悪化してしまう。NTTドコモとしてはあくまで、今年度が業績の底になるという考えのようだが、同社のサービスに対する信頼は大きく落ちているだけに、懐疑的な見方も少なくない。

それだけにNTTドコモには、長きにわたって顧客の信頼を失うこととなった原因の本質がどこにあるのか、その究明が強く求められる所だろう。同社は間もなく次の中期経営計画を打ち出す時期でもあるだけに、長期的な視野に立った戦略転換が必要ではないか。

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