2度にわたり漏れが発生

有人月周回探査のアルテミス2号、水素漏れで打ち上げを3月に延期

Munenori Taniguchi

Image:NASA

NASAは、有人月周回探査ミッションのアルテミス2号の打ち上げを3月に延期すると発表した。早ければ2月8日にも打ち上げを予定していたものの、ウェットドレスリハーサル(WDR)と呼ばれる一連の本番前試験で、アルテミス1号に発生したのと同様の水素漏れが発生したためだ。

WDRは本番と同じようにカウントダウンをしながら行う一連のテストだが、今回はその工程中、2度にわたり水素漏れが検出された。そのため、NASAは2月3日未明(現地時間)、アルテミス2号のWDRを終了し、50年以上ぶりの有人月周辺飛行となる本ミッションを、2月11日に終了する現在の打ち上げ期間中には実施しないと決定した。

最初の漏洩はSpace Launch System(SLS)の中段にある液体水素タンクへの「高速充填」中に発生した。このときは、技術者の手によって漏洩が解決できたため、燃料充填を再開できた。

2月3日のブリーフィングで、アルテミス打ち上げ責任者のチャーリー・ブラックウェル=トンプソン氏は「今回の漏洩は、アルテミス1号で確認された兆候と類似していたと言える」と述べた。

技術陣は液体水素の充填を停止し、地上設備と宇宙機間のインターフェースの一部であるクイックディスコネクト継手のシールを温める措置を講じた。これはアルテミス1号で開発された手法である。数回の試行後、この方法で漏洩は解消された。

しかし、2度目の漏れはコアステージタンクの加圧中に発生。ブラックウェル=トンプソン氏は、このときは「圧力上昇が非常に速く、原因が不明だったことは間違いない」と述べ、より詳しい調査が必要になるため、現時点で原因を断定するには時期尚早だとした。

SLSは2022年のアルテミス1号のときも、WDSと2回の打ち上げ中止の試みのなか、複数の水素漏れを経験している。今年1月16日のブリーフィングでは、NASA当局者は、同様の問題を防ぐため、アルテミス1号に基づいてハードウェアと手順の両方に変更を加えたと述べていた。

しかし今回も、アルテミス2号のWDR中に漏れが再発したことで、NASAがアルテミス1号の後に十分なテストや歯止めの改善を実施したのかといった疑問も生じている。

アルテミス2号ミッション管理チームのミッション管理者を務めるジョン・ハニーカット氏は、液体水素インターフェースなどのシステムのコンポーネントレベルの広範なテストを実施し、欠陥や異物の破片がどのように影響するかを理解したと述べた。一方、コンポーネントレベルでのテストとは異なり、完全にロケットとして組み上げられたあとの本番環境における試験でできることには限界があると指摘した。

ハニーカット氏は「今回の漏れは予想外の出来事だった」が「シールに何らかの位置ずれ、変形、あるいは破片が付着していた可能性がある」と、感想とその場での原因予測を述べている。

原因はいくつか考えられる。まずひとつは、SLSをロケット組立棟から第39B発射施設へと移動する際の周囲環境などによって「応力と歪み」に関連する問題が生じた可能性。もうひとつはSLSのこれまでの飛行回数が少なく、飛行率が低いことに起因するものだ。ジャレッド・アイザックマンNASA長官は「SLSの飛行率はNASAが設計したロケットの中で最も低く、今後議論のテーブルに上げるべきことだ」とした。

水素漏れ問題はあったものの、NASA当局はWDRがスペース・ローンチ・システム(SLS)とオリオン宇宙船の他の側面に関する貴重なデータを提供したと述べた。これには、発射台に設置された新型の大型液体水素貯蔵タンクの初運用や、オリオン宇宙船のハッチ閉鎖試験などが含まれる。ブラックウェル=トンプソン氏は、オリオンのハッチ閉鎖試験、特に極低温推進剤を搭載したロケットの場合、「統合型ロケットでは、そうする機会は限られています」と述べている。

今後、NASAは水素漏れの修理をテストし、今回は到達できなかったカウントダウンの最終段階を完了させるため、2回目のWDRを実施する予定だ。

なお、アルテミス2号ミッションの3月の打ち上げ可能期間は3月6日から11日までだが、現在のところNASAはSLSをロケット組立棟に戻すことは考えていない。ただし、この3月の打ち上げ期間を逃すと、次の4月の打ち上げ期間までに、「SLS上段のバッテリー整備など」、発射台ではできない作業を行うために、いったん組立棟に戻す必要性が出てくるという。

前途多難なように見えなくもないが、NASA幹部らはまだ余裕があるようだ。ブラックウェル=トンプソン氏は「総じて、多くの面でわれわれにとって非常に成功した一日だった」と述べた。また、ハニーカット氏も、WDRで得た「一番の収穫は、ロケットがわれわれに話しかける機会を得たこと」だとした。もしロケットがここで異常を出していなければ、打ち上げ本番でそれが出ていた可能性もあると思うと、たしかに不具合の洗い出しとしては良いことだったのは間違いない。

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