自社開発AIサーバーチップは2027年稼働の見通し

アップルとGoogleのAI提携は「時間稼ぎ」、自社AI完成までの短期策か

多根清史

Image:daily_creativity/Shutterstock.com

アップルが今年後半にリリース予定の強化版Siriに、GoogleのGemini AIモデルを活用すると正式に発表し、大きな注目を集めた。この契約は暫定的なものではなく、複数年にわたるパートナーシップになるとされている。

しかし、両社のAI提携は本質的には短期的なものであり、アップルが当面のAIに対する期待へ応じるための「時間稼ぎ」に過ぎないと、著名アナリストは指摘している。

これはアップルのサプライチェーンに精通するアナリスト、Ming-Chi Kuo氏がX(旧Twitter)への投稿で述べたものだ。アップルは中核となるAI技術を長期的には自社で掌握する方針を維持している一方、短期的にはAI分野で高まる圧力に直面しており、それが現在の戦略として表面化しているという。

アップルにとって差し迫ったAI分野の課題は、主に2つあるとされる。

ひとつは、Apple IntelligenceやSiriの全面刷新を約束しながら、いまだ実現していない状況で、今年のWWDC(例年6月開催)で再び失望を招くわけにはいかないという点だ。アップル幹部と親しいことで知られる著名ブロガー、John Gruber氏も、WWDC 2024で華々しく披露されたAI機能について「ペーパーウェアだ」と強く批判していた。

もうひとつは、クラウドAIの急速な進化によりユーザーの期待値が大きく上昇しており、過去の約束を単に果たすだけでは不十分になりかねない点である。刷新されたSiriが予告通りの性能を発揮できるか疑問視されるなか、Geminiの力を借りる以外に現実的な選択肢がない、という判断だろう。

Kuo氏は、アップルとGoogleのAI提携を長期的な戦略転換ではなく、「複数の方面からの短期的な圧力を和らげる」ための施策だと位置づけている。オンデバイスAI(クラウドに依存しないAI)は当面、ハードウェア販売を直接牽引する存在にはなりにくいが、この提携によってアップルは自社AIの開発を継続しつつ、高まる期待に応えるための時間を確保できるというわけだ。

より長期的には、AIはハードウェア、OS、そしてユーザー体験全体の中核を担う存在になると見込まれている。その結果、アップルが中核となるAI技術を自社で保有する重要性は、今後さらに高まるとKuo氏は指摘している。

さらにKuo氏によれば、アップルの自社製AIサーバーチップは2026年後半に量産段階へ移行し、2027年には自社データセンターで稼働を開始する見通しだという。このスケジュールは、アップルがAI需要の本格的な拡大を見込んでいる時期を示唆しているように見える。

アップルのプライベートクラウドサーバーは、オンデバイスAIの計算能力の限界を補完しつつ、他社クラウドAIとの差別化を「プライバシー保護」で図るためのものだ。強化版Siriで使用されるカスタム版Geminiも、この自社サーバー上で動作し、Googleのサーバーには依存しないと報じられている。ユーザー情報が外部へ流出することはない見通しだ。

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