AI、人型ロボット、音源分離技術。LGがCESで「異彩を放った理由」
筆者は毎年に2回、海外で開かれる大規模なエレクトロニークスショーを取材している。ひとつが1月に米国ラスベガスで開催されるCES、もうひとつが9月にドイツのベルリンで開催されるIFAだ。どちらのショーにも韓国のLGエレクトロニクスが常連の出展企業として名を連ねている。
LGエレクトロニクス(以下、LG)の展示はいつも取材に訪れるメディアを楽しませてくれる。筆者もLGのブースには必ず立ち寄ることに決めている。その理由は3つある。
今年もCESで存在感を放ったLGの展示
ひとつはいつも何かしらの新製品と出会えるからだ。記者・ライターとしては、LGのブースに行けば何かレポートできるネタがもらえることが有り難い。ふたつめの理由としては、LGはただ新製品を出すだけでなく、大きく話題になる “変わり種” のプロダクトを用意しているからだ。今年のCESでは、コンシューマー向けを想定したヒューマノイドロボット(人型ロボット)「CLOiD(クロイド)」がそれだった。

そして3つめには、エンターテインメント性を意識した“魅せるブース”の作り込みに好感が持てるからだ。毎年LGブースのエントランスには、その年のヒーローモデルとなるテレビを使ったビデオインスタレーションが飾られ、来場者を歓迎する。今年のCESでは、後述する本体の薄さ9mmの「Wallpaper TV(壁紙テレビ)」を銘打った最新の有機ELテレビを38台宙吊りにしたインスタレーションを披露した。
近年のCESは、エレクトロニクス業界の関係者が集うビジネス・トレードショーとしての色調を濃くしている。多くのトレードビジターの目的はパートナー企業との商談を行うことだったり、新しいビジネスチャンスに出会うためだ。もちろん、すべての来場者がLGに興味を持ってCESに足を運ぶわけではない。だからこそ、LGはブースのエントランスを華やかなビデオインスタレーションで飾り付けて、来場者の目を引くことに力をいれている。正しい戦略だと筆者は思う。

今年、LGと対称的な戦略を取った企業が、韓国のサムスン電子とソニーだ。それぞれにCESのメイン会場であるラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)にブースを持たず、市内のラグジュアリーホテルでプライベートショーを開催した。各社はその真意を伝えていないが、サムスンのブースは入場が招待制だったことから、筆者の周りにも「今年は残念ながらサムスンの展示は足を運ばなかった」と語るメディア関係者が少なくなかった。
ソニーも今年はLVCCでの大規模な出展を見送った。毎年ソニーがブースを構えていたエリアの1/3程度を使って、今年はソニー・ホンダモビリティがAFEELA 1と、2026年の新しいプロトタイプ車両を披露していた。
筆者の推測だが、ソニーはLVCCのこの展示スペースを複数年契約しているのだろう。だとすれば、ソニーが今年のCESに出展をしなかった理由はソニーの勢いが後退しているからというわけではなく、あえてCESに出展しなかった場合の影響、あるいは反響を計測したのだとみることもできる。両社が来年、CESの出展についてどのような判断を下すのか筆者も注目している。
LGがロボット向けアクチュエーターの新ブランドを発表
脇道に逸れた話題をLGに戻そう。
同社のブースは今年も見どころが沢山あった。一方で、LGが出展する製品やサービスにの中には、CESが開催される毎年初の時点でまだコンセプト段階のものも多く含まれている。CLOiDも試作中のヒューマノイドロボットだ。
ブースでLG本社の出展者に聞くと、今回ブース中央のステージでCLOiDが見せた「洗濯物のあと片付け」のような家事について、今後本機がどのような家事をこなせるようになるのか、ユーザーとボイスチャットもできるのかなど「できること」はまだ未定だという。今回のCESの時点で、本機の市場投入予定に関する具体は語られなかった。
むしろ本機については、LGが独自に開発するロボットの関節部の基幹部品であるアクチュエーター製品の新ブランド「LG AXIUM(アクシウム)」を立ち上げたことにも注目したい。アクチュエーターはヒューマノイドロボット、あるいはロボットアームの正確で滑らかな動きを実現する心臓部とも呼ぶべきパーツだ。
昨年に米国のロボティクス企業であるBear Roboticsとのパートナーシップを強化したLGは、ロボット開発のプラットフォームを提供することにもさらに力を注いでいく。LGがロボットエンジニアリングの世界でイニシアチブを取ることができるのか、今後の展開に注目したい。



本体厚さがわずか9mmの生成AI対応テレビ
LGが2026年のCESに出展したオーディオ・ビジュアルに関連する注目製品を振り返ろう。
ひとつは先述した「Wallpaper TV」という愛称を付した、有機ELテレビシリーズのevo W6だ。最初のW6シリーズは2017年に誕生し、超薄型のWallpaper Designを特徴としてうたった。当時のシリーズのコンセプトを磨きあげるため、チューナーや入出力を別筐体とした「Zero Connect Box」に収めて、代わりにディスプレイ部の本体厚みサイズを9mmにまで抑えている。
LGのテレビの中で最も反射が少ないパネル、ゲーミングコンテンツの快適なプレイを実現する最大4K/165Hzまでのリフレッシュレートと0.1msの応答速度、そしてwebOSプラットフォームを通じた様々なテレビ向けアプリコンテンツへの対応が特徴として挙げられる。


LGの2026年モデルのスマートテレビにも、同社が独自に開発するAIエージェントの「FURON(フューロン)」が搭載される。
自然言語による音声入力にも対応しており、LG ThinQシリーズのスマート家電を音声でコントロールしたり、将来はスマートホーム機器をメーカーやプラットフォームの違いを超えて相互接続できるようにする共通規格「Matter」をサポートするスマートIoT機器との連携にもターゲットを拡大していく。
なお、LGの2026年のOLED evoシリーズはwebOSプラットフォームを通じてGoogle GeminiやMicrosoft Copilotなど、スマートテレビのために最適化された生成AI系アプリも活用できるようになる。





独自の音源分離技術を活かした、デュエットも楽しめるカラオケ機能
2026年にLGがオーディオ製品の主力に掲げるXBOOMシリーズは、アメリカの音楽プロデューサー兼ラッパー、シンガーソングライターのウィル・アイ・アムが多くのモデルをプロデュースする。CESの会場にはパワフルな重低音再生にフォーカスしたBluetoothスピーカーの最新ラインナップが展示されていた。

筆者はXBOOMの最上モデルのスピーカー「xboom Stage 501」が搭載するカラオケ機能に注目した。 “歌もの” の音源を独自のAIアルゴリズムによりボーカルとバックトラックのパートに分離した後、ボーカルトラックのプレゼンスを調整してカラオケが楽しめる。

Apple Musicのアプリが実現しているカラオケ機能のApple Music Singに近いものだが、XBOOMは1万曲以上の楽曲を学習したLG独自のディープラーニング技術により「あらゆる楽曲再生」で楽しめる点が特徴となる。
キー(音程)の調整にも対応するほか、2人のアーティストによるデュエット曲は、片方のアーティストの声をそのまま活かしながらデュエットを歌うこともできるようだ。xboom Stage 501の本体には2基のマイク入力を搭載している。専用の音楽ファイルや、この機能へのサブスクリプションも不要で楽しめる。
