Apple Fitness+を待たなくても、すぐに試せる
実は無料、Apple WatchのAIコーチング「ワークアウトバディ」使う方法。“英語のみ”だが日本でも利用可

アップルがワークアウトや瞑想など、フィットネス系のコンテンツを集めた「Apple Fitness+」を2026年早々から日本で開始する。
5年前にアメリカ、イギリス、オーストラリアなど英語圏から始まったサービスだ。アメリカでは月額9.99ドルの有料サブスクリプションサービスとして提供されている。
このApple Fitness+を待たなくても、すぐに試せるApple Watchの新しいフィットネス機能がある。Workout Buddy(ワークアウトバディ)だ。
Apple Intelligenceに対応するiPhoneが必要で、対応する言語は英語のみになるが、ワークアウトバディ自体は無料で使えることがメリットだ。どんな機能か紹介しよう。
Apple Intelligenceが実現したAI音声コーチング
ワークアウトバディは、アップルが2025年秋にリリースしたwatchOS 26およびiOS 26から新しく搭載された。Apple Intelligenceを活用した音声コーチが、ランニングやトレーニングなど8種類のワークアウトに打ち込むユーザーを応援する。
例えば「ランニング距離が5kmに到達した際にあらかじめ用意された音声を再生する」など、従来から固定のシナリオに沿って応援メッセージを音声等で再生するアプリはあった。ワークアウトバディの斬新なところは、ユーザーの過去のフィットネス履歴と現在のワークアウトデータをその場で解析し、状況に応じた応援メッセージをApple Intelligenceがつくり出して再生するところにある。
ワークアウトデータの解析処理と応援メッセージの生成はアップルのデバイス上で行われる。だが、ワークアウトバディによる応援音声の生成など、より高度なモデルを必要とする一部の処理については、アップルのプライベートクラウドコンピューティングも併用するものがある。だから、iPhoneをオフラインにしてしまうとコーチング音声が聞こえてこない。
ワークアウトバディを楽しむために必要な環境要件を整理すると、以下のようになる。
- Apple Intelligenceに対応するiPhoneにiOS 26以降を導入している環境で、Apple Intelligenceをオンにする。
- watchOS 26以降を導入しているApple Watch
- 応援音声を聞くためのBluetoothイヤホン(またはヘッドホン。AirPodsシリーズ以外でもOK)
ランニングやウォーキングなど8種目に対応
筆者も環境を整えてワークアウトバディを実践してみた。
最初の関門になるのは、デバイスの言語設定を英語にしなければならないところだ。iPhoneの「デバイスの言語」と「Siriの言語」を「English」に設定する。English(US)やEnglish(Australia)でも良い。
Apple Watchの言語設定も英語にする必要があるので、ウォッチアプリの方も設定を変えておく。「iPhoneを反映」にしておけば、あとで元に戻す時に簡単だ。

ワークアウトバディは、対応する各種目ごとに設定からオンにして使う。Apple Watchのワークアウトアプリを開いて種目を選択してから、画面の右下にあるベル、またはフキダシのアイコンをタップするとWorkout Buddyの各設定が表示される。ここで「Use Workout Buddy」のチェックをオンにする。


音声は3種類ある。Apple Fitness+で活躍する人気トレーナーの声をサンプリングして作ったそうだが、女性(明るめな声)/男性/女性(落ち着いた声)の3パターンから選べる。筆者は「Voice 3」の落ち着いた女性の声を選んだ。
ワイヤレスイヤホンのペアリングはApple Watchとダイレクトにしてもいいし、ウォッチにペアリングしたiPhoneにつながっていても応援音声は聞ける。

2025年12月時点で、ワークアウトバディに対応するワークアウトはランニング(屋外と屋内)、ウォーキング(屋外と屋内)、サイクリング(屋外と屋内)、ハイキング、エリプティカル、ステッパー、高強度インターバルトレーニング、機能的筋力トレーニングと従来型筋力トレーニングの8種目だ。
物静かなトレーニングコーチ。もう少し前に出てきてもいい
筆者はランニングとエリプティカル、従来型筋力トレーニングの3種目で試した。コーチング音声はワークアウトの開始直後にまず、今日ここまでのアクティビティリングの達成状況を伝えて、「リングが閉じられるまであと●●分。さあ、頑張ろう!」と檄を飛ばしてくれる。だが、その後は意外なほどに「おとなしい」。
筆者は通っているスポーツジムで、対面形式のボクシングエクササイズのレッスンなどにも参加する。このような対面形式で行われる「教室」の場合はコーチが終始、参加者にレッスンの内容や身体の動かし方を「しゃべりっぱなし」で指導してくれる。ワークアウトバディはあの感覚からはほど遠い。
屋外ランニングの場合は一定の距離を走るとペース、経過時間、ラップタイム、心拍の状況などを知らせてくれて、「順調だね、頑張れ!」と応援メッセージを添えてくれた。なおワークアウトバディのメニューから、音声で知らせる通知の内容を必要に応じて選択することもできる。
エリプティカルや筋力トレーニングのコーチはかなり物静かだ。音声で知らせてくれる項目の設定メニューも心拍の状況と経過時間しか選べない。アクティビティリングの達成状況をたまに音声で教えてくれる機能といった感覚だ。

ワークアウトの達成状況によって、コーチング音声の内容は変化すると言えばそうなのだが、そもそもワークアウトバディは必要な情報以外はあまりユーザーに話しかけてこないので、Apple Intelligenceが独自に生成している感覚が若干乏しい。
だが反面、これで良いところもある。ワークアウトをしながらミュージックアプリで聴いている音楽や、YouTubeのコンテンツ音声がワークアウトバディによって聴きづらくならないからだ。Apple Music(ミュージックアプリ)については、目標を達成すると再生中の楽曲の音量が少し下がり、応援音声がオーバーラップして聞こえる。YouTubeの場合はコンテンツの音声が優先されて、ワークアウトバディの音声が聞こえてこないことがあった。
とはいえ、より本格的に身体を動かすことに専念したい場合は、うるさいぐらいのコーチング音声を聞きながら励まされたいという方も少なくないだろう。無料で使えるところは魅力的だが、ワークアウトバディの存在感はもう少し強めに押し出すべきだと思う。
日本のフィットネス文化に合わせた進化に期待
Apple Fitness+は2026年に日本語対応が実現する予定だが、アップルの発表によれば、当初は英語で制作されたコンテンツを「日本語のデジタル翻訳音声」で利用できる形からスタートする見通しだ。まずは既存コンテンツのローカライズを優先しながら、徐々にサービスの裾野を広げる狙いがあるのかもしれない。
将来的にはぜひ、日本で活躍するトレーナーの起用や、日本市場向けの独自コンテンツ制作にも踏み込んでほしい。例えば追加料金が必要なプレミアムメニューとして、人気声優やアニメキャラクターの声を活用したボイスパターンを提供すれば、大きな話題を呼ぶ可能性がある。
さらに、ワークアウトバディに外部のサービスベンダーがコンテンツを提供できる仕組みを整え、収益化まで見据えたフレームワークが用意されれば、エコシステムとしての広がりも見えてくる。単なる機能追加にとどまらず、日本市場ならではの文化や創造性を取り込めるかどうかが、今後の成長を左右するポイントになりそうだ。
アップルには、日本のユーザーに寄り添ったフィットネス機能の開拓を期待したい。
