これで訓練したラットが銃を背負って実戦に出撃する未来はあまり考えたくない
ラットにDoomをプレイさせる実験が進化、ついに射撃が可能に

2021年、ラット(大型のネズミ)にDoom IIをプレイさせる様子を公開してネット上を賑わせたプロジェクトが、4年後にその月日をかけた進化を示す映像を公開した。
LinkedInプロフィールで神経工学と機械学習のバックグラウンドを持つソフトウェアエンジニアと名乗るヴィクトル・トート氏が4年前に構築したバージョン1(v1)では、玉乗りのようにボールの上に乗せたラットが走ると、それに連動してディスプレイ上のDoomのマップが動くというだけのシンプルな仕組みだった。
ラットが立つポジションの少し前方には砂糖水が出るチューブがあり、それをなめようとラットが前に進めば、ボールが回転してマップが進む。ネズミの前には普通のPCディスプレイが置かれてDoom IIのマップの様子を映し出しているが、ネズミがそれを見て、意識してマップを移動していたかと言えば、実験の映像を見た限りでは少々疑わしいようにも思えた。
では、4年後の開発を経て誕生した第二世代のシステムではそれがどうなったのだろうか。トート氏はv2となるシステムを開発し、その様子をウェブサイトで公開した。
アップデートされた機材は、v1のシステムと同様にラットの動きをボールでDoomの動きに連動させる。しかし、v1ではあまりラットに注目されていなかったディスプレイが、v2ではラットの目前を180度包み込むように配置された有機ELディスプレイに変更され、ラットにDoomの世界への没入感を与えるようになった。
また、v2システムでは、仮想空間にいるというリアリティを演出するため、マップ上で壁に突き当たったときにラットの鼻先にエアーを吹き出すことで「何かに衝突した」というイメージを実感を伴って与えている。

そして、ラットに物理的なトリガーボタンを与え、それを押すことで射撃することを可能にした。これにより、ラットはDoomの世界を駆け回るだけでなく、敵に対して攻撃を加えることが可能になった。
このシステムは、脳にチップを埋め込んだりするような侵襲的なインターフェースを一切使用していない。その代わり、センサー類やモーショントラッキング、報酬ベースの学習によって、ラットがDoomの世界を体験可能なようにしている。ただし、ラットの銃を撃つ動作が意図して行われているのかはわからない。
この実験を理解する上で重要なのは、これがラットのプロゲーマーを育成しようとしているわけではないという点だ。この実験では、ラットにDoomの建て付けやルールを理解させ、銃を使って敵キャラクターをひたすら殺戮することを教えようとはしていない。
トート氏がやろうとしていることは、物理的なプラットフォームを用いて、仮想空間とのより豊かな相互作用を生み出すことだ。ラットはv2システムによってゲーム内で複数の異なる行動を実行可能になり、それらの行動を確実に評価し報酬を与えられるように進化した。
動物に対し、なにか特定の物理的行動が仮想空間内に示された抽象的な結果に関連していることを教えるのは時間がかかる。そのうえで訓練を拡大していくには忍耐力も必要になる。だが更新されたシステムでは、v1システムではサポートできなかったより野心的な実験が可能になったことは間違いない。
トート氏はウェブページで「ラットは仮想環境内を移動し、射撃機構を起動させることに成功した。ラットがシステムに慣れるには約2週間かかるため、時間的制約もあって高度な訓練は完了していないが、初期データではシステムへの良好な関与が示された」と述べている。
Doomのゲームエンジンは軽量で、改造も容易であり、ギークならご存じの通り、あらゆる環境に移植され、動作してきた数十年にわたる歴史がある。
やっていることはジョークみたいに見えるが、トート氏のv2システムは技術的な進歩を示し、一方でゲームエンジンを標準化された低コスト仮想テストベッドとして活用できる将来的な実験の可能性を示している。
ゲームエンジンを最初から作り直すのではなく、実験的なニーズに合わせて調整・制御可能で、ノウハウも豊富なDoomエンジンによって、将来の様々な仮想環境における実験が可能になるのであれば、この実験は意外に実用的な選択肢を研究者に提供するものなのかもしれない。
- Source: Rats Play Doom
- via: Tom's Hardware
