Metaの人材引き抜きも加速?

“Appleシリコンの父”も退職へ? アップルの頭脳流出が加速

多根清史

Image:Photo For Everything/Shutterstock.com

アップルの主要幹部が相次いで退職するなか、次はハードウェア技術担当シニアバイスプレジデントのジョニー・スロウジ氏が同社を去る可能性が高いと、Bloombergが報じている。

同社の内情に詳しいMark Gurman記者によれば、スロウジ氏はティム・クックCEOに「近日中の退職を真剣に検討している」と伝え、他社に移籍する意向を示したという。クック氏は引き留めに動いており、相当な報酬パッケージの提示に加え、最高技術責任者(CTO)への昇格案も検討しているという。つまり、ハードウェアエンジニアリングとシリコン技術の広範囲を監督させ、社内で2番目に強力な幹部とする案である。

スロウジ氏は2008年にアップルに入社して以来、iPhoneやiPad向けプロセッサー開発を主導し、Aシリーズチップの基盤を築いた。特に2020年のM1チップでは、インテルのx86系チップからArmベースのAppleシリコンへの移行を成功させ、「Appleシリコンの父」と称される存在である。

ここ1週間ほどの間に、AI責任者ジョン・ジャナンドレア氏、元UIデザイン責任者アラン・ダイ氏、総務責任者ケイト・アダムス氏、環境政策責任者リサ・ジャクソン氏が相次いで退職を発表している。Gurman氏は、これらの離職の一部はベテラン幹部の退職年齢が理由だとしつつも、「不安をもたらす人材流出」として社内で認識されていると述べている。

さらにGurman氏は「アップルはこの10年間、新しい製品カテゴリーを成功裏に立ち上げていない」と指摘している。そのため、AIを軸に次世代デバイスを開発する力を持つ機敏なライバル企業から、人材を引き抜かれやすくなっているという。

実際にMetaは、アップルのAI幹部を次々と採用している。最近では、元UIデザイン責任者のアラン・ダイ氏をMeta Reality Labsのクリエイティブスタジオ責任者に就任させた。OpenAIもまた、アップルの基礎モデル上級研究者や強化学習研究者が移籍したとの報道がある

当のクックCEOも先月65歳となり、まもなく退任するのではとの憶測を呼んでいた。Gurman氏はこれを否定しつつも、後継者計画は何年も前から進められていると述べている。今後、数年以内に大きな変化が起こる可能性が高そうだ。

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