3年前と真逆の立場に

OpenAIが「コードレッド」発令か。Google対抗でChatGPT改善優先、広告など後回し

多根清史

Image:Mijansk786/Shutterstock.com

OpenAIのサム・アルトマンCEOが「コードレッド」(非常事態)を宣言し、ChatGPTの品質向上に注力するため、広告などのプロジェクトの優先度を下げるよう指示したと複数のメディアが報じている。

アルトマン氏は、ユーザーごとのパーソナライズ機能や画像生成機能の改善、速度と信頼性の向上、そしてより幅広い質問に回答できるようにする必要があると、全社向けのメモで挙げたという。

今回の非常事態宣言は、AI競争で先行してきたOpenAIが競合他社に差を縮められているという危機感を示すものだ。とくに懸念しているのはGoogleである。同社は11月にGemini 3 Proを公開し、複数のベンチマークテストでChatGPTを上回った。またAI画像生成ツール「Nano Banana」がユーザー人気を集めており、AnthropicのClaudeはビジネス顧客に支持されている。

今週初めには、OpenAIが無料ユーザーに広告表示を導入する計画を示唆する動きがあった。しかしアルトマン氏は社員に対し、広告、ショッピング向けAIエージェント、パーソナルアシスタント「Pulse」の開発は後回しにすると通知したとされる。

OpenAIはこれまで一度も利益を上げておらず、存続のため常に資金調達を行わなければならない。広告などの収益で投資を賄えるGoogleや他の大手テック企業よりも財政面で不利であるということだ。アルトマン氏はChatGPTの巨大なユーザーベース(週あたり8億人以上)と最先端のAI研究での優位性によって財務への懸念を抑えてきたが、状況が揺らぎつつある。

今回の事態は、約3年前にOpenAIがChatGPTを投入した際、Googleが置かれていた立場と正反対である。当時、Googleは自社の検索事業に対する深刻な脅威と捉えて「コードレッド」を宣言したと報じられていた

今回のメモについて、OpenAIはコメントを拒否している。一方、ChatGPT開発責任者のニック・ターレイ氏はX(旧Twitter)で、同社の優先事項は「ChatGPTをより有能にし、成長を続け、世界中でアクセスを拡大し、さらに直感的でパーソナルな体験にすること」だと強調している

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