投資が需要を上回る状況

中国当局、高まるヒト型ロボットブームにバブル化を懸念

Munenori Taniguchi

Image:CCTV

中国はAIに加え、ヒューマノイド(ヒト型)ロボットの分野でも世界をリードしようとしているようだが、規制当局は現在、その勢いが現実を凌駕するのではないかと懸念し始めているかもしれない。

中国では今年、ヒューマノイド開発がブームになっており、開発する企業やそこへの投資、そして発表されるプロトタイプの数が急増し、さらにはマラソン大会や陸上競技会のようなイベントが複数開催されるまでになり、人々の期待を膨らませている。

だが11月27日、中国国家発展改革委員会(NDRC)の報道官は、ヒューマノイドロボット分野は性急な開発と必要以上に期待を煽るリスクに対してバランスを取らなければならないと警告し、業界に対して責任ある成長を求めた。

実際のところ、ヒューマノイドの実証された使用事例は産業分野でも一般向けでも、その数が限られている。にもかかわらず、中国ではこの分野への投資が急増している。報道官によれば、中国では現在150社以上の企業がヒューマノイドを開発しており、その半数以上はスタートアップか、他分野から鞍替えしてきた企業だという。そうしたノウハウの少ない企業の参入が急増することにより、製品の陳腐化や進歩の停滞につながる可能性を当局は危惧している。

中国政府は、ヒト型ロボットを動かす技術となる「具体化された知能」を中核的な戦略的優先事項として位置付け、2030年までの発展ロードマップのなかでも将来の経済成長の原動力として挙げた6つの産業のひとつに掲げている。

Image:Unitree Robotics

そのためヒューマノイドの開発は急速に進み、中国の主要な見本市イベントではあたりまえのように二足歩行で物を持ち上げ操作したり、基本的な支援タスクの実行などができるヒューマノイドのプロトタイプがいくつも出展されるようになった。

一部では、物流倉庫や工場での実用に向けたヒューマノイドのデモンストレーションも行われるようになっている。投資家やアナリストは、たとえそのほとんどが大規模契約でなく、お試し的な段階にとどまっているにしても、この分野が成熟しつつあると考えている模様だ。

一部では物流倉庫や工場の単純な生産ラインでの作業、顧客サービスに対応するロボットのデモンストレーションも行われている。Bloombergによると、Citiグループは2026年、中国企業による製造規模の拡大により、ロボットの生産が「飛躍的に」増加すると予想しているとのことだ。

それでも、中国当局は「非常に類似した」製品の波を防ぎ、革新の余地を守るために努力すると述べ、より厳しい監督を行う姿勢を示している。要するに中国は、このヒューマノイド分野の技術的革新と繁栄を望みつつも、安定を犠牲にはしたくないという考えであるようだ。

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