ストア手数料を取っているが補助金を出さず

Steam Machineは安くならない? Valveが「同性能のPC並の価格」と明言

多根清史

Image:Valve/YouTube

今月初めにValveが発表したリビング向けゲームハードウェア「Steam Machine」は、一見すると従来型の家庭用ゲーム機のように見えるが、他社が行ってきたような価格補助は行わず、同等スペックのPCと同じレベルの価格帯になるとValve幹部が明言している。

YouTubeチャンネルSkill Upのインタビューで、ValveのPierre-Loup Griffais氏(SteamOS開発者の一人)は家庭用ゲーム機のような値付けモデルを否定し、Steam Machineは「現在のPC市場から予想される価格帯に近いものになる」と説明した。

同氏によれば、搭載されるAMD Zen 4 CPUとRDNA3 GPUは、Valveが実施する定期的なハードウェア調査に参加しているPCの下位70%を上回る性能を目標としており、同等スペックのデスクトップPCを組んだ場合とおおむね同程度の価格になるとのこと。「自作PCでパーツをそろえ、基本的に同等の性能を得たとき、その価格帯がおおよそわれわれの狙うレンジだ」と述べている。

この発言は、Linus Sebastian氏が自身のポッドキャストで語った内容とも一致する。Sebastian氏はプレビューイベントでValve側に対し、「強力に価格を補助すれば、Steam Machineはより意味のある製品になる」と提案したという。しかし、家庭用ゲーム機的な500ドル前後を想定していると告げたところ、会場にいたValve側の反応は芳しくなかったと述べている。

これらを踏まえると、Steam Machineの価格帯は、同等スペックのゲーミングPC構成から逆算することである程度推測できる。Ryzen 5 7600XやRadeon RX 7600を中心にした構成が近いと見られ、総額は700ドルを超える可能性が高い。つまり、PS5というよりPS5 Proと競合する価格帯になると考えられる。

もしSteam Machineが同等性能のゲーミングPCより大幅に安くならないのであれば、SteamOSをインストールした自作PCで “自前のSteam Machine” を作るゲーマーが出てくるのは当然だろう。特に、Steam Machineが搭載する8GBのVRAMは将来性の面で物足りないと見る向きもあり、自作のほうが柔軟な拡張ができるという判断もありうる。

ただしGriffais氏は、Steam Machineには小型フォームファクター、超静音ファン、HDMI-CEC対応、Steamコントローラーを含むBluetoothコントローラーとの高度な統合など、同等スペック帯のPCとは差別化できる強みがあると語っている。「PCを自作して満足するユーザーもいるが、Steam Machineは通常では得がたい機能を備えた“良い基準値”となるはずだ」と述べている。

従来のゲームプラットフォーム企業は、サードパーティソフトのライセンス料やストア手数料を基盤としてハードを値下げしてきた。ValveもSteamストアでの販売から通常30%の手数料を得ており、Steamゲームを前提としたSteam Machineに補助金を出さない方針は一見すると強欲にも見える。

しかしPCゲームのエコシステムは多様で、値下げしてもハードの販売増に直結するとは限らない。また、Steam Machineは “PCに近いゲーミング機” であり、理論上はWindowsなどを入れてEpic Games Storeなども利用できてしまう。Steamゲームが快適に動作するリファレンスモデルとして、Steamのゲーム体験を統一・標準化することが真の狙いかもしれない。

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