寿命もあと1年程度かもしれません

ボイジャー1号、地球から「1光日」の距離に2026年11月到達へ

Munenori Taniguchi

Image:NASA/JPL-Caltech

1977年9月5日に、木星と土星を接近探査するために打ち上げられた宇宙探査機ボイジャー1号は、その役目を全うした後はそのまま外宇宙へと飛び出し、星間空間の様子を探る星間ミッションへと移行、現在も遙か彼方の宇宙を時速6万1198.19km(秒速17km)の猛スピードで遠ざかりながら、地球へ観測データを送り続けている。

そして、このボイジャーの地球から距離が、いまから1年後の2026年11月ごろに「1光日」に到達することがわかった。1光日とは「光/電波が1日に進む距離」のことだ。

そして、それはNASAのボイジャーミッション管制が50年近くにわたってやりとりしてきた探査機との通信タイムラグが片道で24時間(往復でまる2日)を超えることを意味する。「光速」は秒速29万9792km、時速約10.8億kmというとてつもない速度であり、日常生活においてわれわれがそれを認識する機会はまずないと言えるだろう。

その光速でもまる1日かかるほどに遠くを航行し、現在も通信を維持している宇宙船はボイジャー1号が初めてとなる。ちなみにボイジャー1号は、1998年2月17日にやはり地球から遠ざかる軌道にあるパイオニア10号の距離を追い越し、それ以来「最も地球から遠い宇宙探査機」の座を維持している。

ただ、現在のボイジャー1号は48年もの長期運用のため、すでに各所にガタが来ていることは否定できない。近年では2023年11月に、送信されて来るデータが解読不能なまでに壊れているという事態が発生し、NASAは問題を回避して正常な運用を再開するまでにおよそ半年の期間を要した。また、いまから1年ほど前には、長距離通信を担うXバンドの送信機が不具合を起こしてより電波強度の低いSバンドに切り替わってしまう問題も発生した。これは、システムへの供給電力低下を避けるためにヒーターをオフにした結果、それによってインターロック(機器の誤操作防止や安全確保のための制御機構)が動作したのが原因だった。

NASAがヒーターを切ろうとしたのは、現在も動作している科学機器を用いた観測や、それで得たデータを地球へと送信し、また管制からの操作コマンドを受信するためのエネルギー源であるRTG(放射性同位体熱電気転換器)の発電量が年々低下してきているからだ。当初想定された運用年数を大幅に超えているため、RTGの発電力低下は避けることができない。そのため、NASAはボイジャーが搭載する科学観測機器の電源をひとつひとつ切りながら運用を続けてきた。

だがNASAの見立てでは、それでもボイジャー1号が通信を維持できるのはあと1年程度だそうだ。ボイジャー1号が1光日の距離に到達するのが先か、電源が機能不足になるのが先かはわからないが、NASAは最後の日までしっかりと運用していく構えだ。

ちなみに、いつか機能停止に陥ったとしても、ボイジャー1号は姉妹機のボイジャー2号ともども地球からますます遠ざかっていくことになる。この記事執筆時点では、ボイジャー1号は地球から約253億kmの距離にあり、通信の信号が届くには片道でおよそ23時間半かかる。これが24時間になるのは2026年11月15日と予想されている。

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