中国・西北工業大学が開発
クラゲそっくりの半透明ロボットは水中浮遊して深海生物を調査する

中国西安市にある西北工業大学の研究者らは、水中を浮遊しながら海洋環境や海洋生物の観察・調査研究に活用するためのクラゲ型ロボットを開発した。
本物のクラゲそっくりな外観・動きを再現しており、水中では発見するのも難しいというこのロボットは、動作音もほとんどなく、消費電力も低い。
クラゲの体にあたる部分はハイドロゲル素材で作られており、直径約13cm、重さ約54gの傘型の本体だけでなく、細長い触手まで備えている。また、静電油圧アクチュエーターが本物のクラゲのリズミカルな筋肉の収縮・弛緩動作を再現し、水中での自力での移動を可能にしている。このアクチュエータは生体の神経信号によく似た働きをするため、従来の推進システムに特有の騒音や振動がなく、滑らかで有機的な動きを実現しているとのことだ。
小型カメラとAIチップを搭載したこのロボットは、コンピューターイメージングと機械学習の組み合わせにより、水中の生物など調査対象となるターゲットを高精度に検知・識別することが可能だ。消費電力が少ないことから、この種のデバイスは短時間の探査潜水ミッションよりも、長距離監視を目的として設計されている。ただ、どこまで深く潜って活動できるのか、移動速度はどれぐらいか、データ通信容量や細かな用途といったスペック詳細は明らかにされていない。
不安要素があるとすれば、それはあまりに外観や動きをリアルに再現していることから、天敵となるほかの生物によって捕食されてしまう可能性がありそうなことだ。ウミガメなどは、透明なビニール袋でさえ、クラゲと勘違いして食べてしまうことがある。なんらかの対策が必要になるかもしれない。
西北工業大学の研究者はこれまでにも、本物のマンタのように水中を滑空するロボットをはじめ、昆虫、両生類、脊椎動物からヒントを得たバイオミミクリー技術を生み出してきた。
今回のクラゲロボットは10月21日中国科学技術部の機関紙である科技日報に掲載され、その中で研究者は「この生体模倣クラゲロボットは、低消費電力、低騒音、高度な生体模倣特性を備えているため、深海での秘密監視、生態学的に敏感な地域の観察、海中施設の精密検査などの場面で独自の利点があり、深海の極限環境探査が直面する主要な技術的ボトルネックに革新的なソリューションを提供する」と語っている。
