「FSDもAutopilotも使っていない」とドライバーが言っています

テスラファン、ハイウェイかすめて墜落の米軍機を「FSDが回避した」と誤って拡散

Munenori Taniguchi

Image:mtopchian1/TikTok

先週木曜日、米国オクラホマシティで空港を離陸した直後の米軍機が何らかの不具合により墜落する事故が発生した。

このとき、ハイウェイを走行していたテスラ車の車載カメラ映像には、まさに間一髪で数台のクルマを避けて不時着を試みる空軍特殊作戦司令部の最新鋭軽攻撃・観測機OA-1K スカイレイダーIIの姿が写っていた。

映像を見ると、テスラ車は接近する機体が飛び去ろうとする向かって右方向とは逆にハンドルを切り、その主翼との衝突をすんでのところでかわしているのがわかる。もし慌てて右へ避けようとしていればどうなっていたかはわからないが、ドライバーの冷静な判断が奏功したといえそうな回避シーンだ。

ところが、この動画がTikTokにアップされるや、盲目的なテスラファンがすぐさまこの映像をSNSに再投稿して「FSDを使っていたおかげで衝突を回避できた」と主張した。

この投稿は瞬く間に拡散され、その中にはイーロン・マスク氏が頻繁にリポストするユーザーのアカウントも複数含まれていた。さらには、マスク氏の母親までもが事実確認なしにこの投稿をリポストした

様々なメディアによって幾度となく言及されているが、テスラ車が搭載するAutopilotおよびFSD(Full Self Driving)オプションはその名前とは裏腹に、あくまで先進運転支援システム(ADAS)であり、自動運転を実現するものではない。これは自動運転レベルでいえば依然としてレベル2に分類されるものであり、不測の事態の際にはドライバーが運転操作を行い危険を回避しなければならない。

また、AutopilotおよびFSDを使用中に発生した事故の責任は、ドライバーが負うことになる(レベル3以上の自動運転機能を使用中の事故の場合は、運転の主体がドライバーではなく自動車にあるとみなされるため、自動車メーカーに責任があると判断される)。

しかし、電気自動車メディアのElectrekによれば、テスラファンや株主のなかにはAutopilotおよびFSDは衝突事故の発生を防止し、搭乗者の命を救うと誤って信じ込み、また周囲に対してもそのように主張する者がいるという。

今回の映像のテスラ車オーナーは、当時の状況を質問され「自分は手動で運転していた。FSDは優れた機能だが(それを使っていれば)、その飛行機に間違いなく衝突していただろう」とTikTokのコメントで回答した。だが、FSDによって回避したという誤った情報を再投稿したユーザーらの大半は、その後もこの誤情報を訂正していない模様だ。

たとえば、最初に動画を再投稿したXユーザーのDavid Bellow氏は、その後FSD使用についてドライバー本人が手動で運転していたと言っているとのコミュニティノートの指摘や、他のユーザーから同様の指摘が複数あるにも関わらず、それでもそのドライバーのTikTokでのコメント自体がボットによる誤情報の可能性があると主張し、「本人がFSDを使っていなかったと私に言わない限りそれを信じない」と頑なだ

なお、墜落した米軍機に関しては、オクラホマ州軍発表によれば墜落原因については調査中だが、搭乗していた2人(民間人1名と第492特殊作戦航空団員1名)には怪我もなく、無事に機体から避難したとのことだ。

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