普通の連星は同じぐらいの質量になるはずなのに

赤色超巨星ベテルギウスの伴星「ベテルバディ」は太陽ほどの大きさしかない、X線観測で判明

Munenori Taniguchi

Image:Franco Tognarini/Shutterstock.com

オリオン座を構成する星の中には2つの1等星があり、青いほうがリゲル、赤いほうがベテルギウスとして知られている。

このうちベテルギウスは、周期的、または不規則にその明るさが変わることがある半規則型変光星とされているが、2019年の終わり頃から急激に減光し、1.6等星ぐらいにまで暗くなる現象が発生したことから、一部では超新星爆発の前触れではないかといううわさまで流れたことがあった。

この減光現象はその後回復し、2023年には減光の原因としては200日周期と6年周期の、2つの周期的減光現象が一度に起こったこと、またそのタイミングで大量の塵が放出されて地球からの観測に影響した可能性が高いとの見方が有力となった。

この、ベテルギウスの周期的減光現象について科学者たちは長年、何らかの伴星が存在し、作用しているのではないかと考えてきた。しかし、ベテルギウスは太陽の約700倍も大きく、数千倍も明るいため、近傍にある天体を見つけ出すのは非常に困難だった。

カーネギーメロン大学(CMU)の研究者らは昨年、NASAのチャンドラX線観測衛星とハッブル宇宙望遠鏡の両方で「ディレクター裁量観測時間」と呼ばれる特別な望遠鏡使用の割当時間を取得することに成功し、長年発見できなかったベテルギウスの伴星を調査した。

そして12月6日頃、通称「ベテルバディ」と呼ばれる伴星を発見した。しかもそのタイミングは極めて重要で、ベテルバディは巨大な赤色超巨星から最大離隔点に達したところであり、その後には再びベテルギウスと重なる位置に戻り、以後2年間は観測が困難になるところだったのだ。

研究チームは、2つの望遠鏡を用いてベテルギウスの伴星を詳細に観測し、ハワイのジェミニ北望遠鏡で伴星の画像を捉え、チャンドラ観測衛星を用いてX線データを収集し、この謎の天体の性質を解明した。

カーネギーメロン大学マクウィリアムズ宇宙論・天体物理学センターの博士研究員であるアンナ・オグレイディ氏は「ベテルギウスにベテルバディが重なっていない良好な観測例はこれまで一度もなかった」「これは現時点でベテルギウスに対する最も深いX線観測結果だ」と述べている。

また、研究者らは、この伴星が予想された白色矮星でも中性子星でもなく、太陽とほぼ同じ大きさの若い恒星である可能性が高いことを発見した。オグレイディ氏は、観測できた伴星が非常に小さく、白色矮星でも中性子星でもないと報告している。

通常の連星は主星と伴星の質量が似通ったものになるが、ベテルギウスと今回の伴星の場合は、(伴星が太陽と同じ質量とすれば)その常識に当てはまらず、16~17倍という従来の常識を覆す比率になっている。「これは、極端な質量比を持つ連星の新たな領域を切り開くものだ」「この領域は発見したり、特定したりすることさえ非常に困難であるため、これまであまり探査されてなかった」とオグレイディ氏は述べている。

今回の発見は、まだ未知の部分が多い。天文ファンにとっては、これからどんな発見があるのかも気になるところだろう。

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