下位モデルでも十分な性能
どっちを選ぶ?「ROG Xbox Ally」と「ROG Xbox Ally X」の性能差を4タイトルで検証

ASUSとマイクロソフトが共同開発したポータブルゲーミング機「ROG Xbox Ally」シリーズが10月16日に発売された。価格は上位モデルの「ROG Xbox Ally X」が13万9800円、下位モデルの「ROG Xbox Ally」が8万9800円(ともに税込)だ。
発売から数日が経ち、各メディアでベンチマーク比較レビューが出揃い始めている。数値を見る限り、上位モデルの優位性は明らかだ。
しかし、実際のゲームプレイにおいて、その差はどれほど体感できるのだろうか。5万円の価格差に見合う違いがあるのか。本記事では、4つのタイトルを両モデルで実際にプレイし、その違いを検証した。
スペックが異なる2つのモデル
まず、「ROG Xbox Ally」と「ROG Xbox Ally X」の基本仕様を確認しておこう。
外観は、本体カラーを除けばほぼ同一だ。7インチIPS液晶ディスプレイ(1920×1080ピクセル、120Hz)を搭載し、本体サイズは290.0W×27.5~50.9H×121.0Dmm。Xboxコントローラー由来のエルゴノミクスグリップが採用されたことで、前モデルよりわずかに大型化している。


質量は、ROG Xbox Allyが約670g、ROG Xbox Ally Xが約715g。この45gの差は、主にバッテリー容量の違いによるものだろう(ROG Xbox Ally:60Wh、ROG Xbox Ally X:80Wh)。
インターフェースでは、ROG Xbox AllyがUSB3.2 Gen2 Type-C×2を搭載するのに対し、ROG Xbox Ally XはUSB4×1とUSB3.2 Gen2 Type-C×1という構成。その他、microSDカードリーダー、3.5mmコンボジャック、Windows Hello対応指紋認証センサー(電源ボタン一体型)は共通だ。

コントローラー部分も基本的には同じだが、ROG Xbox Ally Xのみ「RT/LT」トリガーがインパルストリガーに対応する。これはXboxコントローラーと同様、トリガーボタンに専用の振動モーターを内蔵し、ゲーム内のアクションに応じた触覚フィードバックを提供する機能だ。
利用できるかどうかはゲームタイトル次第で、「Forza Motorsport」や「Halo Infinite」などがサポートしている。対応タイトルであれば、より没入感が増すという。

両モデルの最大の違いは、プロセッサーとメモリ、ストレージ構成にある。
ROG Xbox Allyは、AMD Ryzen Z2 A(4コア8スレッド)、RAM16GB(LPDDR5-6400)、ストレージ512GBを搭載。一方、ROG Xbox Ally Xは、AMD Ryzen AI Z2 Extreme(8コア16スレッド)、RAM24GB(LPDDR5-8000)、ストレージ1TBという、明らかに格上の構成だ。

加えて、ROG Xbox Ally XはNPUとして最大50TOPSのRyzen AIを搭載。リコールをはじめとするCopilot+ PC機能も利用できる。スペック表を見る限り、上位モデルの優位性は疑いようがない。

4タイトルで検証:実プレイでの体感差は?
では、実際のゲームプレイではどうか。今回は両モデルで4タイトルをテストした。
ROG Xbox AllyとAlly Xは、付属のユーティリティーツール「Armoury Crate SE」から動作モード(TDP)を切り替えられ、ROG Xbox Ally「サイレント(6W)」「パフォーマンス(15W)」「Turbo(20W)」、ROG Xbox Ally Xは「サイレント(13W)」「パフォーマンス(17W)」「Turbo(25W、電源接続時は35W)」が用意されている。
今回は電源を接続せずに利用する想定で、ROG Xbox Allyは「Turbo(20W)」、ROG Xbox Ally Xは「Turbo(25W)」でプレイした。

テストしたのは「Minecraft:Java Edition」「Vampire Survivors」「サイバーパンク2077」「BIOHAZARD RE:4」の4タイトル。「Minecraft:Java Edition」以外はSteam版を利用した。
Minecraft:Java Edition 意外に差が出る
「Minecraft:Java Edition」はコントローラーの操作に対応していないため、そのままではROG Xbox Allyではプレイできない。そこで、シェアウェアソフトのJoytockeyを使用してコントローラー対応を行った。ちなみに、Bedrock版(Minecraft for PC)はコントローラーに対応しているが、fps表示ができなかったためJava版を利用している。
ROG Xbox Allyでは80~110fps前後で推移するが、頻繁に50fps程度まで落ち込み、カクツキを感じる。描画設定を調整すれば改善しそうだが、デフォルト設定のままでは快適とは言い難い。
対してROG Xbox Ally Xでは、ほぼ100fps以上で安定しており、フレームの落ち込みもなく、終始スムーズなプレイが可能だった。

Vampire Survivors ROG Xbox Allyでも十分
次にカジュアルゲームとして「Vampire Survivors」をプレイしてみた。
ROG Xbox Allyでは、序盤は120fpsで快適に動作する。終盤、画面を覆い尽くすほどの敵が出現すると、瞬間的に50fps以下に落ちることもあったが、おおむね60~80fpsを維持した。
ROG Xbox Ally Xも傾向は同じだが、こちらは終盤の落ち込みも少なく、常に60fps以上をキープした。ただし、この差がゲーム体験に影響するかといえば、答えはノーだ。このタイプのカジュアルゲームをプレイするのであれば、ROG Xbox Allyで何の問題もない。
サイバーパンク2077 設定次第で両モデルともプレイ可能
本格的な負荷テストとして「サイバーパンク2077」を試した。ゲーム内設定は、解像度1280×720ピクセル、フルスクリーンでプレイしている。
ROG Xbox Allyは、ゲーム内ベンチマークでデフォルト設定が平均22.39fps、レイトレーシングを無効にしたSteam Deck向けプリセットでは平均41.80fpsとなった。Steam Deck向けプリセットでは、実プレイでも40fps前後で推移する。
数値だけ見るとかなり厳しそうだが、意外にも問題なくプレイできる。さすがに超美麗グラフィックでヌルヌル動くというわけにはいかないが、7インチのディスプレイで見る分には、多少画質が粗くても気にならない。ちなみに、Steam Deck OLEDでも同等のfpsとなり、ゲーム体験自体も似たような感じだった。
ROG Xbox Ally Xでは、同じ設定でもゲーム内ベンチマークは70.89fps、ゲーム中も70fps前後で安定する。カクツキを感じることもなく比較的快適だ。画質面ではROG Xbox Allyと変わらないが、操作感はよりスムーズだ。

BIOHAZARD RE:4 起動時間の差も無視できない
最後に「BIOHAZARD RE:4」。初代ROG Allyのレビューでも試していたので、その比較もかねてプレイしてみた。
ROG Xbox Allyは、解像度1280×720ピクセル、リフレッシュレート120Hz、レイトレーシングはオフという設定で、おおむね50~60fpsを記録。これは初代ROG Allyと同様の結果だ。シーンによっては30fps台まで落ち、カクツキを感じることがあるというのも同じだ。
一方、ROG Xbox Ally Xは同じ設定でも60~80fpsを維持した。カクツキを感じることも少なく、操作はスムーズだ。しかし、より印象的だったのは起動時間の差だ。
ROG Xbox AllyはBIOHAZARD RE:4の起動(「プレイ」ボタンを押してから)から、メニュー操作ができるようになるまで約1分30秒かかる。これに対してROG Xbox Ally Xは約1分で済んだ。わずか30秒の差だが、毎回のプレイでこの待ち時間が発生すると考えると、体感差は小さくない。
結論:5万円の差をどう考えるか
今回試した範囲では、スペック通りにROG Xbox Ally Xのほうが快適にゲームをプレイできるという結果になった。しかし、その差は思っていたよりも少ないと感じる。
よりハイスペックとはいえ、ROG Xbox Ally XでもAAAタイトルをゲーミングPC並みに快適にプレイするには至らず、グラフィック設定などを下げる必要がある。ROG Xbox AllyもAAAタイトルがまったく遊べないというわけではなく、設定次第では十分にプレイ可能だ。
下位モデルがおすすめな人
- カジュアルゲーム中心にプレイする
- 設定調整を厭わない
- 予算を抑えたい
この条件に当てはまるなら、ROG Xbox Allyで十分だ。浮いた5万円で複数のゲームタイトルを購入する方が、トータルの満足度は高いかもしれない。また、すでにXboxやゲーミングPCを所有しているなら、そこからストリーミングするという方法もある。重量級タイトルは据え置き機に任せ、ROG Xbox Allyは軽量なゲームやストリーミング端末として活用すれば、コストパフォーマンスはさらに高まるだろう。
上位モデルがおすすめな人
- AAAタイトルをより快適にプレイしたい
- フレームレートの安定性を重視する
- 将来的な拡張性を確保したい
このタイプのユーザーには、ROG Xbox Ally Xをおすすめしたい。ROG Xbox Ally XはUSB4を搭載しているので、eGPUを接続するなどの拡張性が高いのもポイントだ。携帯性は失われてしまうが、普段はeGPUや外付けディスプレイを接続して据え置き機のように利用し、気分転換にソファやベッドでプレイするという使い方もできるのは魅力の1つだろう。
好きな場所でゲームを楽しむという点では、どちらを選んでも間違いではない。自分のプレイスタイルと予算を見極めて、後悔のない選択をしてほしい。