リアルな戦闘にFPSゲームのような視界

“戦闘員のテクノマンサー化”掲げる軍用MRヘルメット、Oculus創業者パーマー・ラッキーのAnduril発表

Munenori Taniguchi

Image:Anduril Industries

VRヘッドセットOculus Riftを開発し、Oculus VRを共同創業者した人物として知られるパーマー・ラッキー氏が2017年に設立した軍事技術企業Anduril Industriesが、陸軍兵士が「EagleEye」と称するウェアラブルコンピューティングシステムを発表した。

EagleEyeはヘルメット型だけでなく、バイザーやメガネ型のバリエーションが用意される予定だ。今回発表のヘルメット型にも、昼間に使用する透過型ARタイプと、顔面を覆う夜間用のパススルー複合現実タイプが公開されている。後者の外観は非常にSFチックであり、ゲーム『Metal Gear Solid』に登場するサイボーグニンジャなどを想起する人もいるかもしれない。

EagleEyeはマシンラーニング、センサーやデータの処理技術を用いて、ユーザーに対し価値の高い情報を提供するAI対応ソフトウェアLatticeを用いて構築されている。装着した兵士には、その視界にリアルタイムビデオフィードを提供し、側方や後方に向けたセンサー、さらにはドローンなど外部の機器が捉えた脅威を知らせる。また同僚兵士の追跡もできるという。

パーマー・ラッキーCEOは今年2月にEagleEyeを開発中であることを明らかにしており、当時は兵士のヘルメットを完全に置き換える「統合型防弾ヘルメット」と説明していた。

そして9月には、Andurilは兵士向けの新たな複合現実システムの試作品を開発するとの名目で、1億5900万ドルの開発資金を獲得した。これは兵士、センサー、ミッションシステムからのデータをひとつの明確な作戦状況図を提供する米陸軍の次世代システムSoldier Borne Mission Command(SBMC)開発の広範な取り組みの一環だ。Andurilはこの政府予算について「すべての兵士に超人的な知覚力と意思決定能力を身につけさせる」ための「この種の取り組みとしては最大規模」だと述べている。

発表に合わせてAndurilが公開した、EagleEyeシステムの概念説明動画では、EagleEyeが兵士の視界内にコンパスとミニマップを常時表示し、追跡中の味方の兵士を青、検知された敵の兵士を赤い点で表示する様子が示されている。それはまるで(というかほとんど)FPSゲームの画面にあるミニマップ表示そのままの視界だ。

Image:Anduril Industries

夜間にパススルー複合現実タイプのEagleEyeを使用したケースの動画は、まるでサーモグラフィや輪郭強調フィルターをかけたような映像であり、低照度の状況で遠くを歩く人が、コンテナのような遮蔽物の向こうに隠れても、その動く様子が見える謎の透視ビューまで備わっていることを示した。

Image:Anduril Industries

AndurilはEagleEyeシステムの発表において、その開発に関し、複合現実およびAI技術では(かつてパーマー・ラッキー氏を解雇した)Metaと、専用のチップ開発においてはQualcommと、頑丈なアイウェアや防弾に関する専門知識に関してはOakleyおよびGentexと提携していることも明らかにした。ラッキー氏はMetaとの提携を発表した5月のブログ投稿で「私の使命は長年、戦闘員をテクノマンサー(技術を魔法のように使う者)化することであり、Metaと共同開発している製品はまさにそれを実現するものです」と述べていた。

ラッキー氏は今回の発表についての声明で「軍人に新しいツールを与えるのではなく、新しいチームメイトを与える」「ディスプレイにAIパートナーが埋め込まれるというアイデアは、何十年も前から構想されてきた。EagleEyeは、それを初めて実現した」ものだと語っている。

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