MrBeastの表記はMr.Beastではありません

世界一のYouTuber MrBeast、AI生成動画の蔓延は「YouTubeクリエイターにとって脅威」だと警告

Munenori Taniguchi

Image:YouTube

4億人以上のチャンネル登録者数を誇り、世界一のYouTuberとして知られるMrBeastが、生成AIの急激な進歩は「コンテンツ制作で生計を立てている何百万人ものクリエイター」にとって「恐ろしい」ことだと述べた。

MrBeastは、SNSで上のように述べ、もし「AI動画が実際に撮影された動画と同じくらい良くなったら」自分のような人々に何が起こるのだろうかと疑問を呈している。

映画業界やビデオゲーム業界では、AIの使用をめぐって大規模なストライキが行われ、論争が続いている。

先週OpenAIがリリースした最新の動画生成AI「Sora 2」は、著作権で保護されたキャラクターや著名人の肖像を簡単に、かつ本物と見分けがつかないほどのクオリティで生成できることで注目を集めている。特にOpenAIは日本のアニメのキャラクターや作風をAI生成した素材を宣伝の材料として利用することが多いように思える。同社のサム・アルトマンCEOにいたっては現在も、自身のXのアイコンをスタジオジブリ風のものにしている。

つい先週には、オランダ企業がAIで生成したティリー・ノーウッドという人物を「俳優」として活動させるとの発表に対してハリウッドスターのひとりであるエミリー・ブラントが批判的なコメントを出したことが大きく話題になったばかりだ。

英ノッティンガム・トレント大学のラース・エリック・ホルムクイスト教授は「AIをツールとして見た場合、一般的には、創造性をはるかに安価に実現できる道具だと認識されている」とし、「生き残るのは、それを使って本当に優れたコンテンツを作る人たちだけだろうと思う」とBBCに語った。

ホルムクイスト教授はさらに、MrBeastに関してはたとえ生成AIで誰もが手間なく動画を制作できるようになったとしてもさほど困ることはないとも述べている。MrBeastの動画は主に、奇想天外なテーマのチャレンジに賞金をかけて人々に競わせるといったものが多いが、もしそれがAIで生成されていたりすれば視聴者も興ざめだろう。

MrBeastが、AIを脅威と言う背景には、自身が提供するYouTubeチャンネルの統計分析サービスのViewstatsに公開した、動画のサムネイルをAIで生成するツールの一件が影響しているかもしれない。

動画の中身を端的に示すサムネイルは、たくさんの他の動画のサムネイルのなかに並んで表示され、ユーザーの興味を引き付けなければならない。MrBeastはそのサムネイルを、大量のYouTube動画のサムネイルで訓練したAIで生成すれば、クリエイターはどんなサムネイルが興味をひくかを「推測する必要がなくなる」と宣伝していた。

だが、これを見たクリエイターの多くは、生成AIが何に基づいて訓練されているかをめぐる論争について指摘し、オリジナルコンテンツの作成者に報酬を支払うことなく、著作権のある素材がAIの訓練に頻繁に盗用されていると主張する声もあがった。その結果、MrBeastはすぐに月額80ドルを要求するこのツールを取り下げ、人間のデザイナーを紹介するリンクを提供した。

ちなみに、YouTubeにはGoogleが動画生成AIのVeoを提供しているが、この生成AIもYouTubeに投稿された動画を強化学習用データとして利用している。だが、クリエイターには自身のコンテンツが訓練に使われているかどうかは知らされていない。

またOpenAIも、上で紹介した動画生成AIの訓練データにどの著作物が使用されているかは明らかにしていない。一方で、コンテンツクリエイターやその他権利者に対しては自ら除外申請をしなければ使用可能とみなすオプトアウト方式だと案内している。クリエイターが苦労して生み出したコンテンツを搾取するようなやり方に対する批判の声も上がっているが、大半の生成AI利用者はおそらく、詳しく考えていないか気にしていない。

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