mp3で保存したと言っています
“世界一の嫌われ者”マーティン・シュクレリ、ウータン・クラン幻のアルバムの複製疑惑で新たな訴訟

元ヘッジファンドおよび元製薬会社CEOのマーティン・シュクレリが、ヒップホップグループ「Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)」の世界に1セットしか存在しないCDボックスセット作品『Once Upon A Time In Shaolin』をその購入契約内容に反して不正に複製し、また自らのフォロワーに(一部を)聴かせたことに関して、アルバムの価値と独占権の毀損を理由とする訴訟を起こされた。
シュクレリは自身が創業した製薬会社で、すでに特許が切れ、ジェネリック製品も存在しなかったトキソプラズマ症治療薬Daraprim(ダラプリム)の製造販売権を取得、市場を独占流通状態としたうえで、同薬の価格を約55倍につり上げて多額の資産を得た。そのせいで米国では「Public enemy No.1(世界一の嫌われ者)」や「Pharma bro」と呼ばれるようになった経緯がある。
その後、シュクレリはヒップホップグループWu-Tang Clan(ウータン・クラン)が6年の歳月をかけて製作し、(物理的に)世界に1セットしか存在しない2枚組ボックスセットアルバム『Once Upon A Time In Shaolin』を、約200万ドルを投じて手に入れた。
Wu-Tang ClanのメンバーRZAはこの作品の販売において、現代アートとして扱われることを希望し、マスターテープも処分して再販されないようにしたうえで、購入する者には「2103年(製作から88年間)までは商業的に利用してはならない」という契約に従うことを条件とした。そのため同作品は、名実ともに世界で1セットしか存在しない幻のアルバムとされている。
ところが、この作品を入手したシュクレリは、同作品の一部を個人のライブ配信上で流した(これはドナルド・トランプ氏が2016年のアメリカ大統領選挙で勝利したら流すと事前に述べた約束を守った格好だった)。
シュクレリはその後、投資家に対する虚偽の報告や自身が運用し失敗した2つのヘッジファンドから数百万ドルを不正に得ていた事に関する裁判で有罪となり、服役した。
暗号通貨、NFT、デジタルアート投資グループのPleasrDAOは、シュクレリが証券詐欺罪の有罪判決を受けた際に没収された総額約740万ドルの資産から、このCDボックスセットを競売で落札し、現在の所有者となっている。落札価格は400万ドルだったとのことだ。
しかし、PleasrDAOのメンバーがアルバムの写真を投稿した際、シュクレリは「LOL、お前らバカだね、俺がmp3持ってるぜ」とコメントを付けたとされており、これが今回の訴訟の原因になったのかもしれない。もし、シュクレリが本当に複製を所持していて敗訴となれば、シュクレリはアルバムの複製物を全て放棄するとともに、複製物に関するすべての情報、配布した相手先、さらにそれによって得た利益額を裁判所に提出しなければならなくなるはずだ。