3年どころか20年がかり

トランプ政権のゴールデン・ドーム計画コスト、マンハッタン計画の100倍かかる可能性

多根清史

Image: bella1105/Shutterstock.com

米トランプ大統領が提唱した米本土向けミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」の費用は、3年間で1750億ドル、初年度は250億ドルの予算を想定している。これは宇宙空間への迎撃システム配備も含んだ公式見解である。

しかし専門家や予算機関は、この推計は楽観的すぎると警告している。米議会予算局(CBO)は詳細分析を行い、数十年単位で5000億ドル以上に膨らむ可能性を指摘した。これは現行計画の2〜3倍以上であり、スケール拡大や技術的不確実性が要因とされる。

アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)は、防護範囲や脅威の種類・規模、耐障害性によって費用が大きく変動すると分析した。20年間の運用では最小2520億ドル、最大で3.6兆ドルに達し、マンハッタン計画の10〜100倍、アポロ計画の数倍に相当する。

しかも、その規模でもロシアや中国の大量ミサイルには対応できないとされ、トランプ氏の「迎撃率ほぼ100%」という主張とは乖離が大きい。

さらに戦略国際防衛問題研究所(CIS)は、国防総省外の様々なリソースを統合して迎撃能力を高める必要性を指摘している。具体的なコストは公表されていないが、AI導入などでシステムは複雑化し、多大な資金投入が不可避とみられる。

最大の課題は宇宙配備迎撃ミサイルである。前例はなく数千基が必要とされるが、近年は商業衛星の生産や打ち上げ費用の低下で実現性は高まっている。ただしCBOは2000基の配備に1610億〜5420億ドル(20年スパン)を要すると試算しており、トランプ政権の想定を大幅に超える。打ち上げ費用は総コストの10%以下に過ぎず、効果は限定的である。

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