レコメンデーションがないTikTok買収は無意味に近く

米中、TikTok米国版売却で合意。アルゴリズムも含む枠組みか

多根清史

Image:Ascannio/Shutterstock.com

米中当局はTikTokの米国版アプリを米国の投資家に売却することで合意に達したと発表した。これまでトランプ政権は合意に至ったと何度か主張してきたが、中国側がその主張を支持したのは今回が初めてである。

Reutersによると、この合意は今週金曜に予定されている米トランプ大統領と中国国家主席・習近平の電話会談で最終確認される見込みだという。中国側も両国が「基本的な枠組みの合意に達した」と述べている。

米ベッセント財務長官は、締め切りが9月17日に設定されており、この期日がTikTokの米国での運用禁止の危機を生み、交渉を加速させたと説明している。さらに合意成立までの期限を90日間延長できるとしている。この合意には米国議会の承認が必要だが、現在はトランプ支持の共和党が優勢であるため、否決される可能性は低いと見られている。

合意内容の詳細は明らかにされていないが、ベッセント氏は中国側が重視する「TikTokの中国的特徴(ソフトパワー)」が保持される一方で、米国側は国家安全保障を最優先にしていると強調している。

この「ソフトパワー」が意味するものについて、英Financial Times(FT)によれば、中国サイバースペース管理局副局長の王景涛氏は月曜、記者団に対して米中当局が「アルゴリズムおよびその他の知的財産権のライセンス供与」を含む枠組みに合意したと語ったという。

TikTokの価値の核心はアルゴリズムにあり、それを欠いたアプリを買収しても意味がない。たとえばレコメンデーション技術がなければ「ユーザーの好みを学習し、好まれそうな動画を無限にスクロール表示する」というコア体験が失われるだろう。中国側は当初、売却取引にアルゴリズムを含めることを拒否していたが、今回は歩み寄った形となる。

さらにFTによれば、この合意を見越して米国向けTikTokは独立したアプリとして開発が進められている。ただし米国ユーザーが作成したコンテンツは「その他の国々」のアプリでも引き続き共有され、その逆も同様に扱われる見通しだという。

米国向けTikTokアプリの最終的な所有権が誰の手に渡るのかは依然として不明である。トランプ大統領はかつて「非常に裕福な人々のグループ」が買い手になると述べていた。

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